「タカラジェンヌの別れの言葉」を読んで【1/4】
『タカラジェンヌ別れの言葉~退団挨拶から振り返る宝塚人生~/阿部彩子著(東京堂出版)』を読みました。
この著者の本を読むのは初めてですが、なかなか深い宝塚の生徒に対する愛情が感じられました。
とても良かったので、私の個々のジェンヌさんへの思いも含めて4回に分けて感想などを綴ってみたいと思います。
宝塚ファンでない方には申し訳ないけど。
宝塚の生徒は退団する際には基本的に宝塚大劇場と、東京宝塚劇場での本公演千秋楽に大階段から一人ずつ降りてきて挨拶をする機会が与えられます。
その退団挨拶の言葉から印象に残った生徒の宝塚人生を振り返っている本です。
その中から私の印象に残ったジェンヌさんのエピソードを取り上げてみます。
2012年退団の雪組トップスター・音月桂(おとづき・けい)さん。
彼女はいつも明るく、舞台でもひたむきで真摯な態度が目につきました。
しかし、トップ就任後お披露目公演ではトップ娘役が決まらず、舞羽美海(まいはね・みみ)さんと、夢華あみ(ゆめか・あみ)さんの役替わりという不安定なスタートを切り、その後の公演も今ひとつの演目が多かった印象があります。
特に「仮面の男」については、観客からの大不評により、公演中に脚本が大幅変更になるなど散々な目に遭っています。
この本で知ったのですが、東京公演千秋楽では銀橋で「君がそばにいる」を歌いながら大粒の涙をボロボロと流したそうです。
トップ娘役になった舞羽さんと、そして雪組の仲間と苦境を乗り切った喜びや安堵などが涙になったのでしょう、普段の音月さんからみると考えられない様子です。
サヨナラ公演の「仁」では最高の輝きを見せながら添い遂げ退団をした舞羽さんと宝塚を去りました。若々しくフレッシュな印象をいつまでも感じさせながら、実は堂々とした根性も人情もある素敵なトップスターでした。
続いて、月組トップ娘役・蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さん。
退団挨拶では、「蒼乃夕妃といえば、みんなが“男前”だと答えてくれます。娘役なのに・・。」と泣き出したのが印象的でした。
でも、「悩んだ時期もあったけど、それが私らしい娘役の形なんだと最後まで貫かせていただきました。」と振り返ってくれました。
星組から組替えでやって来た彼女は、新トップスター・霧矢大夢(きりや・ひろむ)さんの相手役として抜擢されました。
上級生からも“姐さん”と慕われる蒼乃さんは“寄り添う”娘役ではなく、“自立”する娘役という印象でした。
トップ・プレお披露目となった名古屋中日劇場の「紫子(ゆかりこ)」を見に行きましたが、1987年に初演され好評だった星組の「紫子」で南風まいさんが演じた舞鶴姫をより深い解釈で演じて驚きました。
霧矢さん演じる紫子は、双子の兄の城主が病に倒れ、その妹・紫子が兄になりすまし、政略結婚で舞鶴姫を娶ることになる数奇な運命のお話でした。
戦にも敗れ、兄・妹の“とりかえばや”も全てバレてしまい、舞鶴姫が紫子に別れを告げる場面では、「悲劇の女性同士の別れ」として蒼乃さんは演じ、初演ではなかったことですが、観客が皆、すすり泣いて感動的なシーンになりました。
後日、霧矢さんと蒼乃さんの対談で、霧矢さんから「男役と娘役として組んで〇年」という話が出たときに、蒼乃さんから「いいえ、男と女としては紫子のあとですよ、紫子は私達、女同士ではありませんか。」と言って、霧矢さんが「ああそうか、紫子は男のなりをしていたけれど女同士だったんだね、今気付いた。」という場面があり、あらためて蒼乃さんの「役」への取り組み方、深い「役」への解釈を感じたのでした。
ミュージカル「ジプシー男爵」のプロローグで、霧矢さんと蒼乃さんは6分にも及ぶデュエットダンスを踊りました。私も初めてこんな展開を目にしました。
シンプルな舞台セットの中、二人だけで観客をこれから始まる物語の世界に誘ってくれる素晴らしい力量にノックアウトされたこともありました。
また彼女の気品も色気もあり、スピーディーで力感のあるダンスはたいへんな魅力で、霧矢さんとのコンビは大人のトップコンビとして立派なものでした。
今回は、雪組・音月桂さんと、月組・蒼乃夕妃さんのお二人について書いてみましたが、次回は・・誰にしようかな、この本に書かれているジェンヌさんたちは、どの方もそれぞれ魅力たっぷり、そして私の思い出もたっぷりなので・・楽しみつつ考えておきます。
今回はこれまで(^-^)
【Now Playing】 Am I Blue / Sheila Jordan ( Jazz )
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