【2/3】「The Lost Glory / パッショネイト宝塚 ! 星組・東京公演」見ました
前回はミュージカル「ロスト・グローリー」の中盤辺りまでの全体的な印象を書きました。
今回は個々の演者についてふれてみます。
柚希礼音(ゆずき・れおん)さんは、ストーリー・テラー的な部分も含め、この物語を中心になって引っ張って行かなければならない、しかも柚希さんの演技が実はこの物語を成立させるための最重要部分を担っていて、今の柚希さんでなければ“やりこなせない”貴重な役どころを見事に最後まで演じ切っていたと思います。
それは実に感動的なまでのもので、主演ではないものの、星組・柚希礼音さんの屈指の名作、代表作と言えるものになったのではないかと感じました。
主演の轟悠(とどろき・ゆう)さんは、人間の弱い部分、特に“嫉妬”などが、人生の中でどう蠢(うごめ)いていくのか、また強い信念などを併せ持っている役柄とそれらがどう相互作用していくのか・・という難しい役を実に丁寧に、そして柚希さんへの役としての思いと、個人的な期待を含めた思いを込めて演じられていたと思います。生意気言ってすいません<(_ _)>
さらに夢咲ねね(ゆめさき・ねね)さんは、役どころは轟さんの妻ですが、シェイクスピアの原作よりも踏み込んだ役柄が植田先生から盛り込まれていたところをうまく感じ取り、幸せの頂点から不幸のどん底に落ちて行く様子を描くだけでなく、自分自身が今までどう生きてきたか、これからどうして生きていくのか・・そういう一人の女性の人生模様までも演じ、しかもちょっと“引き加減”の穏やかな演技が女優としての磨きが掛かってきたと感じ取られ、好演でした。
紅ゆずる(くれない・ゆずる)さんは、二番手としては、柚希さんに騙され、人生を狂わされ、自暴自棄になる弱い人間の役どころで、ちょっと本人的には不満も残るかもしれませんが、最初のしょぼくれたところから、夢咲さんと会い、夢咲さんにも夫の轟さんにも強気に出るところ、さらにクライマックスの全てを棄てた狂気に近い様子など、演じ分けも良く、苦労されたとは思いますが、紅さんの良い部分が発揮されていたと思います。
真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんは、こちらが本当は紅さんが演ずるべき役かと思いましたが、柚希さんの復讐の核となるきっかけを作る男として、そしてビジネスでは辣腕を発揮するものの、ある意味女にだらしない部分も同居している役をだらしなくはならずに、スマートに演じて実力どおりのものが出ていたと思いました。
その真風さんと恋のすれ違い的な役で登場する綺咲愛里(きさき・あいり)さんは、次期トップ娘役が決まっていない現状で一歩踏み出したのか・・という存在感を示していました。
あまりの小顔で、その美しさが舞台上では映えないような気もしてもったいないと思いましたが、落ち着いた演技で及第点であったと思います。
ウォール街の全てを掌握する伝説の靴磨き少年を演じた礼真琴(れい・まこと)さんは、登場するだけでパッとあたりが明るくなる持ち前の輝きを見せ、歌唱も見事、存在感を十分に示しました。
気になったのは、轟さんの秘書的な役割を演じた、専科の美城れん(みしろ・れん)さん。
ネタばれしすぎるのでお楽しみに内容は書きませんが、最後の最後にこの物語の仕上げのバルサミコ・一滴的なじわっとくる演技を見せて、さらに感動的なものにしてくれました。こういう人が貴重な存在なのだとあらためて思いました。
最大のクライマックス部分、全てが明らかになり、柚希さんは自分の思いの丈を吐きだし、それぞれの役者が魂を込めて作り上げていた舞台はあまりにも感動的で、これから見に行かれる人は楽しみにしていてください。
私もこみ上げてきて大変でした…σ(^_^;)
今回の植田景子先生の作品、シェイクスピアのオセローでは、主要な登場人物が皆死んでしまい、そこには何も残らなかった・・という人生の哀感ばかりが残るものですが、さすが先生、クライマックスで轟さんの思いやりが明からになったり、静かにもう一度この悲劇をそれぞれが振り返り、噛みしめながら、再度人生を歩み直して行くところまで描いて、悲劇からの一筋の光明も見えて、「それでも人生捨てたものではない」という、心は痛むが、少しだけ温かいものが見えたラストに、またしみじみと感動しました。
・・また、長くなっちゃった(^^;)
次はラテン・ショーの「パッショネイト宝塚!」について書きたいと思います。
すいません、お時間ください(^_^)
【Now Playing】 サンデーヒットパラダイス / 三宅裕司他 ( ニッポン放送 )
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