「無名の人生」という考え方
『無名の人生/渡辺京二著(文春新書)』を読みました。
このあいだ、船橋に出掛けたときに「ときわ書房」本店で見つけた本です。
読んでみようと思ったのは、この「腰巻き」のコピーです。
『「成功」「出世」「自己実現」などくだらない ・・「生きるのがしんどい人々にエールを送りたい」』
この本があった棚には、上記のコピーの正反対の内容の本ばかり、(^^;)
そりゃそうだ、たいていは成功や自己実現などについてどうすればよいのか、そんな本でなきゃ書店にわざわざ出向いて本を選ぼうなんて人には“用無し”だと思ってしまいます。
でも、とても惹かれるものがありました。
最初の方では、昔は「死ぬ」こと自体たいした問題ではなかった、ということが書かれていて、人生わずか50年の時代には、現在とは異なる「死生観」があったのではないか、という著者の調べた事例を含めた考え方が示されていました。
確かに「死」の意識の仕方によっては、著者が言う「無名の人生」は現実味を帯びてきます。
「幸せだった江戸の人びと」という章では、幕末・明治期に日本を訪れた外国人の記録を例に、日本人の幸せそうな様子が描かれていました。
今の若い人が嫌なことがあればすぐ辞めることについても、「行きたくて行っている人間などいません。それを克服するにはけっこう努力を要し、職場に行けない人にシンパシーを持たないわけではないが、みんなそれを我慢して、努力もしている、なぜ努力するかというと、そうしないと自分と家族を食べさせられないからです。」
とまとめています。
うなずいちゃうんだよなぁ( ̄O ̄;)
生きたいという強い意欲を持たなければ、厳しい現実のなかでは生きていけない、とも書かれていました。
人生、生きて行くためには、他人と関わり、トラブルや葛藤が生じる。
男女関係、親子関係、友人関係、仕事関係、なにひとつ簡単に済むものなどない。
苦しみ、悲しみ、ひがみ、憎しみ、などマイナス感情が湧くだろうが、そこで見苦しい自分に出会うことになる。
・・しょっちょう出会っています (・_・;
大事なのは、どんな方法、手段を使ってもそれに耐えろ、と言っています。
それが「生きる」ことだと。
この本の一番肝心なところについては、営業妨害になるので、どうやって自分の心や姿勢を保っていくのか、という部分は詳しく書きませんが、結局、「人間の在り方としては、無名のままに死んでゆくのがいい」と、ラストに向かって書かれていました。
この本を読んでいる最中も、「ここはわかる」という部分もあるのですが、まだまだ私には「そこまで達観できていない」という部分も多くありました。
しかし、特に今から老後にかけての自分の生き方にヒントとなることが書かれているのは間違いありません。
なかには立派なことをやり遂げて死んでゆく人もいるが、私にはできそうもない。「せいぜい世の中のためになるよう最低限のことはして、あとは、この世に生きている楽しみを享受したい。」と書かれていて、「そうかもしれない」とも思いました。
「毎年、毎年、咲いてくれる花を見て楽しむのもいいし、心の通い合う女の人と出会うのもいい。もうそれだけでほかに言うことはありません。」・・とも。
30パーセント~40パーセントは理解できましたが、これからさらに年齢を重ねるにつれ、理解が深まり、共感できるような本であると感じました。
「無名の人生」、うまく生きていけるでしょうか。
【Now Playing】 So Yesterday / Hilary Duff ( Pops )
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