「ビートルズ解体新書」を読んだ
『ビートルズ解体新書/中山康樹著(廣済堂新書)』を読みました。
2012年8月刊行のものです。
著者・中山康樹氏は、元スイングジャーナルの編集長で、jazzのトランペッター、マイルス・デイビスの研究、心酔ぶりについてはこの人の右に出る者はいないでしょう。そして、その触手はロックのビートルズ、ストーンズ、ディラン、ロック一般に関しても広く深く拡がっていて著書多数です。
ビートルズに関する著書もかなり多いと思いますが、今回は「解体新書」と称して、ポールとジョンばかりがクローズアップされるビートルズの、残り二人、ジョージとリンゴの重要性について触れながら、CDで出ている「アンソロジー」シリーズの3組のアルバムに収められている曲について解説し、ビートルズの楽曲、曲作り、サウンドなどについて“解体”していく、という趣向です。
まずはジョージとリンゴについてですが、ジョージのコーラスが無ければビートルズのあのコーラスグループとしても一流であるハーモニーは出てこない、リンゴのドラムについても、あのドラムサウンド無かりせばビートルズは成り立たない、という展開の進め方で書かれていました。
その通りだと思いましたが、でも新書版ということでスペースが無いということもあるのでしょうが、もうひとつ掘り下げてもらいたかった、曲ごとの実例を示してほしかった、という印象でした。
続いて「アンソロジー」シリーズに収録されている曲について一曲ずつふれながらビートルズを“解体”していくわけですが、文中にも時々書かれているのですが、アンソロジーに収められている曲については、残っていたビートルズの様々な録音段階のテイクをそのまま紹介しているわけではなくて、いくつかあるテイクをリミックスして一曲にまとめたりしているものも多くあるので、“解体”された音をそのまま私達ファンが聞けるわけではないのです。
なので、著者の意図に反して“解体”という作業にはなかなか結びつかず、著者も歯がゆい思いをしたかもしれませんが、事前に期待していたこちらもちょっと中途半端で消化不良な思いをしました。
ただ、私もアンソロジーについては、「きょうはちょっと真剣に探究心を燃やして聞いてみよう」などと思っても、CD6枚に渡るあの長い海賊盤的な楽曲には忍耐が持たず、結局はBGMとして、ながら聞きしてしまうということになってしまいます。
それを丹念に一曲?(ジョンやポールの喋りも含めて)ずつ研究心旺盛に聞き、その裏にある四人の考えや、プレイ、ビートルズの曲作りの飽くなき探求心などに目を向けているのは、やはり好きでなければ出来ないことです。
ただ、やはり“解体新書”的にこの「アンソロジー」を聞いていくのは、前述した通り無理があったと思います。
メンバー個々の心情についてだとか、アルバムごとに共通したサウンドがいかにして作られていったのか、とか、テーマをギュッと絞っていった方が良かったのかもしれません。
ビートルズファン(ちょっとマニアックな)としては、それなりに楽しめましたが、何か新たな発見みたいなものは正直ありませんでした。
それとビートルズ初心者にはちょっと内容的に厳しいものがあるかもしれませんので、それなりにビートルズのアルバムは聞き尽くした人向けの本かもしれません。
よろしかったら、書店でちょっと手に取ってご覧いただければと思います(*^_^*)
【Now Playing】 Chains / The Beatles ( Rock )
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