超芸術トマソンの時代に戻ってみた
千葉市美術館で開催されている『赤瀬川原平の芸術論展』。
10月28日の開催直前に、その赤瀬川さんが亡くなりました。
11月頭に久しぶりに赤瀬川さんの作品や人柄にふれてみたくなり、美術館に出掛けたのですが、私の知っている「超芸術トマソン」の時代の赤瀬川さん以外にも、さまざまな活動、作品を世に出している(問うている?)ことを知ることになりました。
訥々(とつとつ)と語る赤瀬川さんの、なぜかそばにいる人を安心させる人柄というか雰囲気は他の人には見られないものでした。
書店では亡くなられた赤瀬川さんの“振り返り”効果を狙ってか、氏の本が台車に乗ってこれから平台にでも置かれようとしているところでその書店に入った私は、台車から直接この『超芸術トマソン/赤瀬川原平著(ちくま文庫)』と『路上観察学入門』を手に取りました。
トマソンというのは、もともとプロ野球のジャイアンツに入団したゲーリー・トマソンがその由来となっています。
メジャーリーグから鳴り物入りで来日したトマソン選手は来る日も来る日も空振り三振ばかり、・・それをまた巨人軍は大事に大事に最終的には万年ベンチになってしまうのですが、バットにボールが当たらない選手を高給で雇っていたのです。
超芸術トマソンは、町にある役に立たないのに、きちんと保管されているもので(例:階段があって上り下りもできるのに、のぼったところには何らかの理由でドアなどが埋め殺されるなどして役に立たない、でも壊れると大事に補修されていたり管理されているようなもの、それを超芸術“トマソン”と名付けたわけです(^_^;))、最初に発見されたものは、「純粋階段」だの、四谷で見つかったので「四谷階段」…(^_^;)などと呼ばれ、いよいよトマソンの観察が始まります。
その頃、私はこのムーブメントを大いに面白がり、楽しみました。
何冊かトマソン関係の本も、当時買い求めたり、自分でも探してみたりしました。
今回のこの本は、当時私が読んだものに、さらにいろいろと追加されていて、あの頃の気持ちがよみがえってきました。
読んでいて感じたのは、読み進むうちにどんどんと、またトマソンに興味が湧いてきてしまった、ということでした。
最初は数人で、「これが果たして芸術?」と、半信半疑で少人数だったところから大きな動きになっていって、文中にもテレビなどでトマソンを紹介すると、もうすっかり周囲に超芸術トマソンが定着しているといったエピソードが語られていました。
意外と超マイナーな出来事ではなかったのかもしれません。
本屋さんにも当時トマソン関連本が並んでいたような気もしてきました。
人って、こんなトマソンのような怪しくて、いかがわしい“超芸術”にも夢中で楽しんでしまう余裕があるんだな、と当時を思い出しつつ読みました。
とにかく、次から次へとトマソン発見報告、新タイプのトマソンを見いだした報告が赤瀬川さんのもとに集まり、びっくりしたり笑ったり、感動したりの楽しい本でした。
千葉市美術館の展示も途中で展示替えがあるようなので、もう一冊の「路上観察学入門」も読んだうえで、もう一度美術館を訪ねようかと思っています。
それに、超芸術以外の赤瀬川さんの活動、作品も再度見たいと思っています。
千葉市美術館は、近年その企画展の良さで話題を呼んでいます、興味を持たれた方は、どうぞ足をお運びください。
【Now Playing】 橋幸夫の地球楽団 / 林直樹(歯科技工士) ( TBSラジオ )
« 見いつけた!(*^_^*) | トップページ | 続いて読んだ「赤瀬川原平」さん関係の本 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 巣鴨に落語を聞きに行ってきました。(2023.12.06)
- 「日本列島なぞふしぎ旅 -中国・四国編-/山本鉱太郎」という本を読んだ。(2023.11.16)
- 「宮本貴奈トリオ with エリック・ミヤシロ ~Special JAZZ Concert~」に行ってきました。(2023.10.01)
- 嵐山光三郎さんの「文人悪妻」を読みました。(2023.09.26)
- 佐倉市立美術館で開催されていた企画展「IMAGINARIUM」を見てきました。(2023.09.25)
コメント