太田和彦さんの居酒屋本、また読みました
『居酒屋を極める/太田和彦著(新潮新書)』をすでに一週間くらい前に読み終えていたのですが、その後体調をくずしたり、いろいろあって読後感をちょっと遅れましたが書いてみます。
以前にも何冊かご紹介した太田さんの“居酒屋本”ですが、今回のこの本は、とてもゆったりとした書きっぷりで、居酒屋の選び方や、居酒屋での身の置き方などを、独特のほんのり酔ったような雰囲気で書かれています。
今回読んでいて、太田さんがあの椎名誠さんと深く、特に“酒”に絡んで交流があったことを知りました。
椎名さんの「怪しい探検隊」の一員であり、その中でも過酷な『どれい』部隊を担っていたことも知りました。
急にお二人の“繋がり”がわかって、何か謎が解けたような、視界が開けたような明るい気分になりました。
何と言っても、椎名さんは学生時代からの大好きな文を書く人(特にビール絡みの文章が卓越d(^_^o))、そして太田さんは最近ご著書を拝見してファンになった“居酒屋”と言えば、そして日本酒(特に燗酒)と言えばこの人の文が一番沁みてくる、そんな方(*^_^*)
ビールと日本酒の私にとっての“両巨頭”が、交流されていたことを知り、またうれしくなりました。
太田さんの本の特徴は、単に「あの店がよい」「あの酒がうまい」などではなくて、その店がある町の歴史や、お客さんの様子、海が近かったり、山の奥深いところにあったり、その地域の特徴なども含めて居酒屋というものがあるのだということを教えてくれるところです。
そして、実際に居酒屋に入ってみて、その店主や、家族など働きの人たちを見て店の良さを感じ、数ヶ月、数年してまたその店に立ち寄り、店主や家族の様子を見てまた喜んだりしているところが、とても人の情を感じて“ジン”となるのです。
東日本大震災のあと、自分がかつて出掛けた居酒屋にも行って、見舞いに回り、その様子も書かれていましたが、どうしても連絡が取れなかった居酒屋があり、その話を別の居酒屋でしていたところ、連絡が取れなかったその店主が飲んでいて、感激の再会をする話も書かれていました。
震災で全てを失った店主は、この機会に他の名居酒屋を訪ねて勉強をし、もう一度店を開けるための準備をしていたのです。
その後、港のもとあったところにお店を再開する話が書かれていますが、太田さんの文を読んでいるだけで、うれしい気持ちというか、感動に包まれました。
ただの居酒屋本ではない。太田さんの独自の心に残る居酒屋本でした。
これはおすすめです。
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