ビートルズ草創期から解散後まで、語り明かしている本、読みました。
『ビートルズの真実 The True Story of The Beatles /里中哲彦・遠山修司著(中公文庫) 』を読みました。
573ページに渡る大長編でした。
とにかくビートルズの四人(・・ピート・ベストを含めると五人?)の生まれたところから、家族、親類も含め、彼等に関わった周囲の人達についても、実際にお話を聞きに行ったりしてかなり詳しく当時の様子を再現するかの如く書かれていました。
メンバーそれぞれの生い立ちと家庭環境や家族・生活の状況、ジョンがつくったビートルズの前身バンド、クオリーメンのその時分の様子や、ハンブルクでの下積み時代など、実際に周囲にいた人がどう関わっていたのか、心情を含め、まるで見て来たように書かれているので、驚いてしまいます。
読んでいると、なるほどそうだったのか、・・と思わず頷いてしまうのですが、でもメチャメチャ詳しく説明する遠山さんは1970年生まれ、ビートルズの解散時に生まれているのです。
どうしてこんなに確信を持って語れるのか・・と読み始めてすぐに思ったのですが、290ページまで使って、やっとビートルズをメジャー・デビューに導いたマネージャーとなる、ブライアン・エプスタインが現われるのです。
300ページ近くまで来て、まだレコード・デビューまでたどり着きません。
ここまで読むのは、メンバーの家族も含めた人間関係やいろいろな“もめごと”などについて語られ、いささか疲れました。だってビートルズの音楽の話題そのものにはあまりふれてこないので、興味が尽きそうになったのです。
著者にとっては、前半の部分が著者自らが当時の関係者に接触し、実際に過去を語ってもらい、知り合いになり、一番思い入れが強い部分なので、聞き取ってきたことをまとめていく段階で、見て来たような記述になったのではないでしょうか。
ブライアン・エプスタインがマネージャーとなり、次々と手を打ち、やがてパーロフォンと契約し、プロデューサーのジョージ・マーチンと出会ってからは一気に売れっ子になり、夢のような展開、そして全米制覇、さらにツアーの中止からレコーディングに音楽的活路を見いだす部分までは怒濤の展開で進められていました。
むしろこっちの方が私としては読みたかったのですが、たぶん、下積み時代のビートルズとそれに関連する人についてがこの本の一番得意とする分野なのだと思います。
四人の人物像についても語られていますが、特にオノ・ヨーコが現われてからのジョンについては、かなりひどい人という印象で書かれているように感じましたし、ヨーコについても、ジョンが一方的に惚れたのではなく、奥さんのいるジョン宅に手紙を出し続け、「会わなければ死んでしまう」などと、妙な作戦に出たり、わざと会ってくれたときに指輪などを忘れて、もう一度会えるきっかけを作ったりして、ヨーコはとんだ“くわせもの”だと決めつけてもいます。
でも、私が思うに、人が人に惚れたときにはいくらヨーコが年上だとはいえ、それはそれ、子供じみたことをすることもあると思います。時分の胸に手をあててみても、そうは考えられないのかな、とも思いました。
ジョンにしても、下積み時代に喉から手が出るほど欲しかった富と名声、その他考えられるもの全てを手に入れたのに、「そこには何も無かった」・・そんな時に出会ったある意味、人生を方向付けてくれそうな女性に特別な感情を抱くのは不思議ではないと思います。
おまけに、・・「ヨーコは、ジョンに対しては家庭生活上の影響としては良いものがあったのかもしれないが、音楽的には何一つ良い影響を与えなかった。ビートルズ解散後はジョンはシャウトする曲を歌わなくなった。」とも書かれています。
そんな単純なものではないと思うんだけどなぁ。それにヨーコがいなかったら、ジョンは解散後の70年代前半くらいに飲んだくれて、またはドラッグに溺れて、そして悪い友人達にそそのかされ、騙されて、野垂れ死んでいたのではないかと、私は思いますよ。
ヨーコ抜きで、かつてのビートルズ前半のようなシャウトする曲を作ったり、歌ったり、また著者はジョンの解散後の曲は暗いものばかりであまり聞きたくないということも書いていますが、明るい曲を書く理由が無ければジョンだってそんな曲書くわけがないと思うんだよね。
イマジンはほとんどヨーコの影響で書かれたもので(ま、そうかもしれないよ・・)、「所有(財産)の無い世界を想像してごらん」などと言っておきながら、自分は邸宅や財産をいくつも所有している、矛盾してるじゃないかとも書かれていました。
曲は「作品」であって、ジョンやヨーコの発想を発表しているもので、実生活や自己の信念の発表の場ではないし、そうしろというのであれば、それは子供じみていると私は思いました。
最後までジョンのビートルズ解散後の作品やヨーコについては、ほとんど良いことが書かれていませんでした。
でも、あの残された作品は、やはりジョンそのものであり、ジョンの生き方であり、歴史だから・・もうちょっと書き方があるとも思いました。
ジョージについても、解散後に一番の大活躍をしたにも関わらず、“女ぐせ”が悪く、人間的に問題があるような書きっぷりで、作品についてもあまり評価されていない印象でした。ちょっと可哀想な気もしました。
だって、仮にここに書かれていることの70パーセントが真実であったとしても、ジョージはビートルズ時代にはジョンとポールのあまたある名作の手伝いを、ギタリストとして我慢して我慢して務め(どんな人でもそういう気持ちになると思いますよ)、自分の作品にバンドとして取り組んでもらえる機会がものすごく少なかったわけです。
複雑な精神状況になるのは当然ではないかと思います。
ビートルズの周囲の人については、人生の機微などを含め理解ある記述になっていて、人情味ある良書であると感じました。でもビートルズ達・本人については厳しさが目立ったというのが私の読後の感想です。
ただ、この本に書かれていることは、様々な本を読んでもなかなかここまで語られていることは少なく、ビートルズ四人のバンドの歴史の中での雰囲気はかなり伝わってくるものだと思います。
初歩的・基本的なビートルズの知識が既にある人には面白く、知識・資料的な側面からも面白いものだと思います。
書店で見かけたら、ビートルズ・ファンのあなた、手に取ってみてください。
ただし、どんな本でも“鵜呑み”にして読んではいけませんよ。(^_^)
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