日本美の再発見をドイツの建築家におそわった
『日本美の再発見/ブルーノ・タウト著・篠田英雄訳〔増補改訳版〕(岩波新書)』を読みました。
タウトの論文二篇と日記抄二篇の訳に「日本美の再発見」と題して1935年に刊行されたのが、タウト没後半年のこと。
その後、版を重ね、紙型が傷んだのをきっかけに、「日本建築の世界的奇蹟」と「伊勢神宮」の二小篇を新に付け加え現在に至り、2014年の段階で、実に57刷となっています。
版を重ねてきたのは著者ブルーノ・タウトの日本を見つめ、日本の建築を見つめる視線が日本人も気付かないものであったからに他ならないでしょう。
タウトの感想は、文としても落ち着いた風格あるもので、当時の日本人には、“目から鱗”の感動的名文となっているように感じました。
桂離宮や、伊勢神宮、飛騨白川の農家、秋田の民家の美しさ、タウトはこれらを褒め称え、日本人にとっては、まさに「再発見」となったのだと思います。
2015年の現在、タウトの慧眼に驚きを禁じ得ません。
タウトは、上記のような日本建築に「最大の単純の中の最大の芸術」の典型を見いだしたのでした。
特に桂離宮に行ったタウトのそのときの様子は、最初は“立ち尽し”、その後4時間あまりを御庭と御殿の中で過しています。
桂離宮で見、考え、語ったことを余すことなく述べるには別に一巻の著書を必要とするだろうと語っています。
タウトはこの本の中で日本の様々なところに出掛けて行くのですが、“西洋かぶれ”した建物や、見かけ倒しの豪邸などを“いかもの”と切り捨てています。
タウトの「単純の中の芸術」という感覚に照らし合わせると、それらは唾棄するような扱いをされていました。
また、この本には、当時の日本の田舎の風景、建物、暮らしぶり、人びとの服装なども書かれていて、そちらも面白い(*^_^*)
読んでいるだけで、1900年代前半の空気、匂いまで感じられるようでした。
久しぶりにきちんとした日本語を読んだような気がしましたが、なんとこれがドイツ人が語ったものであることにあらためて驚きました。
もし書店で手に取る機会があったら、パラパラとめくってみてください。
懐かしい整然とした落ち着いた日本語に出会えます(^_^;)
【Now Playing】 ダンスホール / ティム・ハーデン・トリオ ( Jazz )
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