25年ぶりに復刻された名著「ジャズ喫茶が熱かった日々」を読んだ
『ジャズ喫茶が熱かった日々(おれたちのジャズ喫茶誕生物語)/birdtaki・瀧口孝志(ぱる出版)』を読みました。
有楽町の三省堂で見つけた表題の本、1991年に刊行された本の改訂新版です。当時取り上げたジャズ喫茶のその後の足跡も追記されていました。
全国31の有名ジャズ喫茶マスターが店を始める経緯と、苦闘の日々、そして独自のユーモアや悲哀を込めた文章が心を打ちました。
そして惜しまれつつ閉店した店、消息がわからなくなっている店もありましたが、3分の2はいまだ健在!という、うれしい事実もわかりました。
そもそもジャズ喫茶なんて、この本のどのお店のマスターも書かれていますが「儲からない」ことこの上ないわけで、それでも開店に踏み切るそれぞれのマスターの人生と、お店にやって来る人達、ミュージシャンなどの話題にも事欠かない、さらに日本各地にあるお店の土地柄、人柄なども伝わってくる名著であると、あらためて読んでみて感じました。
私はこんな本を読んでいるにもかかわらず、ジャズ喫茶全盛期を知らず、ジャズに対する熱い想いを胸に秘めたマスターと喫茶店に通う人達の不思議な関係の只中にいたこともありません。
ですが、時代背景を感じさせる様々なエピソードと共に書かれているこの本のそれぞれの喫茶店のお話は強く、印象深く、私の心に伝わってきました。
キーワード的に多くの店の話題の中に現われる「アルバート・アイラー」「セシル・テイラー」「エリック・ドルフィー」「オーネット・コールマン」らのミュージシャンは、私がモダン・ジャズを中心にジャズを聞き始め、ジャズの良さがわかりだし、深く入り込もうとしたときの最初の『難関』でした。
これはいったい・・、と途方にくれ、耳に“心地よい”とは対極にある、人の心をえぐり出し、耳に突き刺さり、嫌がらせをするかのような楽曲、演奏の数々・・(^^;)、いやあ、試練でした。
すっかりいい大人になってから私が行ってみたお店についても、この本に掲載されていましたが、それぞれのマスターが持つジャズへの想いは、人生そのもの、ジャズは単なる音楽でないものとして存在しているのがよくわかりました。そして、それに深く感銘を受けました。
どのマスターだったか、ジャズは“人生”、“生き方”だ、とおっしゃっていましたが、まさにそんな時代の熱い男達(女達・・女性マスターも登場していました)の意気がそのまま文章になっていました。
お店のお客様として登場する有名ミュージシャンや、植草甚一氏など日本のジャズシーンには欠かせない人達のエピソードも興味深く嬉しいものでした。
素晴らしい名著の復刻版、ジャズが今でも好きな人、ジャズに特別な想いを抱き続ける人には涙ものの良書です。もし本屋さんで見つけたら頁をめくってみてください。
【Now Playing】 オトナのJazz Time / 島崎保彦・阿里耶 ( ラジオ日本 )
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