原田知世の「恋愛小説」を聞いた
原田知世さんのいちばん新しいアルバム『恋愛小説』を聞きました。
海外の佳曲を原田さんがカヴァーしているのですが、これはすごいアルバムです。
一曲目からいきなりビートルズ(ポールの曲)の「夢の人」を歌うのですが、この“ニッチ”な曲を取り上げること自体が素敵なこと、そしてまったくビートルズの「夢の人」とは異なる深く思索的なものに仕立てていて、ものすごくうれしい“ショック”を受けました。
二曲目には、あのノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」をその作者のJesse Harrisと歌います。
これも想像を絶する素晴らしいものになっています。どうやらアナログ盤でシングル化もされるということで、この曲にはぴったり、そして知世さんのシングルとしてもレコード盤っていうのが曲の存在に似合っています。
多くの曲がアコースティック・ギター、ピアノ、ドラム、フェンダーのローズ・ピアノやハモンド・オルガンなどのシンプルな演奏で、時にフルートなどの管楽器も入りますが、部屋の中で歌うような、庭先に出て歌うような、その場の空気まで感じさせるやさしく、せつなく、聞いているものの心を包み、沁みてくる・・そんな印象です。
特にこのアルバムで感じたのは、“歌い上げる”でなく、“声を張る”でもなく、囁くように、問いかけるように、そっとうったえかけるような知世さんの歌唱が唯一無二のもので、まったくオリジナルの世界を創り上げているな、ということでした。
私の中では、サディスティック・ミカ・バンドの「黒船」、クリエイションの「Pure Electric Soul」、玉置浩二の「Cafe Japan」、外道の「外道」など、私が選ぶ日本の大名盤の中のひとつに入りました。
聞く人の想像を遙かに超えるものを聞かせてくれるもの、それが私にとっての名盤です。
「恋愛小説」というタイトルから、中の歌詞カードは、「本の頁をめくった写真にその歌詞が書かれている」という凝ったものです。
こういう同梱のものにまで“世界”を香らせるっていうのも心づかいですね。
このアルバムを聞く機会がありましたら、どうぞその世界に身を投げ出して聞いてみてください。
早口で聞き取れない歌や、身の回り2メートルくらいの自分のことばかり歌っている歌、歌詞と譜割りが合わない未熟な曲、リズムがいつも同じでメロディも変わり映えのしない駄作にお嘆きのあなたにやさしいアルバムとなっております・・・。
【Now Playing】 If You Went Away / 原田知世 ( Pops )
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