元NHK美粧師の本を読んだ
『一流の顔/岡野宏著(幻冬舎文庫)』を読みました。例によって、ブックオフで108円!d(^_^o)
作品として刊行されたのは2004年11月となっていました。
著者の岡野宏氏は、白黒TVの時代からのNHKアート美術部に在籍、時の首相から、様々な番組に出演される芸能人のみならず、学者、芸術家、小説家、政財界の著名人、海外の有名映画俳優などの“顔をつくる”仕事をされてきた方です。
著者は、時には美粧を施す相手との会話からどういう化粧にするかを判断したり、むしろ会話をしない方がいいという人もいたりして、その選択は著者の研ぎ澄まされた“カン”によるとしか言えないものがありましたが、それは見事に結果に結びついていることが多かったことがこの著書から分かりました。
人の話をよく聞いていて、それをすぐに取り入れ、見事な衣装で現われた作家の故遠藤周作氏、ドラマの中にちょっと出るために化粧に現われた松本清張氏が最初は気にいらなかった付け髭を実際に勧めて付けてもらい、皆から評判となり、うれしくなってそのまま銀座の行き着けのバーにまでして行ってしまった話、肌が弱い故渥美清さんが化粧から逃げ回り、でも「鉛筆だけ貸して」と言って、鉛筆だけで独り変身していた話など、どれも化粧そのものよりも、登場する有名な方々の「人柄」がとても楽しく、化粧を通してその人の生き方まで見えてくるという本でした。
松たか子さんがまだ学生でNHK「花の乱」に出演することになり、著者が担当となったときに、お父さんの松本幸四郎さんから手紙が・・。
「とにかく、つくりこまないでくれ」というものでした。
そして、その後も何度も同様の手紙が著者の岡野氏に届きます。
“つくりこまない”というのは、岡野氏も松さんを最初に見て思ったことと同様だったそうです。
松さんのシミひとつない肌は桃のような産毛に覆われ、肌はほんのりピンクがかっている。どうつくってもきれいになる顔だと岡野さんは思ったそう。
松さんと会話していくなかで全体のイメージを決めようとした著者が選んだのが、穢れのない初々しさと爽やかさを活かすこと、自然体の美しさにすることでした。
ようするにお父さんの松本幸四郎さんが希望したように“つくりこまない”のです。
デビュー間もない娘の松さんの将来を心配した幸四郎さんは、それを手紙で何度も頼んできたようです。
その後の松さんの活躍は皆さんもちろんご存知でしょう、コマーシャルでは親しみやすい、そして感じの良いイメージ、舞台や映画でもどんな悪役を演じても松さんのイメージは壊れない、そんな女優さんになりました。
紅白の司会までやってましたね。
こんなエピソードも氷山の一角、次々と私達が知らなかったあの女優の素顔、優しさ、厳しさなどが語られ、面白く読めました。
今回は、化粧、衣装等身に付けるものを含んだ自分の見せ方の本のご紹介でした。
時代的にちょっと懐かし過ぎる部分もあるかと思いますが、なかなか読み応えのあるものでした。
【Now Playing】 A Time For Love / The David Morgenroth Trio ( Jazz )
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