1789 -バスティーユの恋人たち- 役替わり別パターンを見ました
宝塚歌劇・月組東京公演「1789 -バスティーユの恋人たち-」を見ましたので、感想を。
これは、前回同じ演目を見て感想を書きましたが、今回の公演は役替わりがあり、前回とは別パターンを観劇したのでその感想となります。
さっそく役替わりお二人についての感想から。
まずは、主役の龍真咲(りゅう・まさき)さんが演ずるロナン・マズリエの妹・ソレーヌ・マズリエ役の花陽みら(はなひ・みら)さん。
前回見たときは、晴音アキ(はるね・あき)さんが演じて、歌を中心になかなか“聞かせる”形で見せてくれましたが、花陽さんはどちらかというと演技の方で力の入ったものを見せてくれました。父の死後、パリに飛び出してしまった龍さん、途方にくれたその妹は、やはりパリでその身を売ることになって、やがて兄と再会となるのですが、身を落とした感じは根っから明るそうな花陽さん(^_^;)演技そのものは迫真のものでしたが、キャラクター的にはどうか、とも感じました。でも、良かったですよ、花陽さんの持ち味は存分に発揮されていました。
次はある意味娘役の主役とも言えるような重要な役、王太子養育係のオランプ・デュ・ピュジェ役の早乙女わかば(さおとめ・わかば)さん。
早乙女さんには星組から組替えで来て、大きな期待が内外からあるわけですが、前回私が観劇し、ご紹介した若手娘役・海乃美月(うみの・みつき)さんが今回は同じ役で進境著しいところを見せていて、早乙女さんも追われているような立場で心中穏やかではないと思います。
早乙女さんは、ひとつ殻を脱ぎ捨てたというか、今までの美しくて、清楚で、お嬢様、みたいなところは剥ぎ取り、可憐さは残しつつも、養育係でアントワネット妃のことを心から案じている娘をうまく演じていたと思います。
心配される歌唱も、龍さんとのデュエット含め、うまくこなしていました。
早乙女さんがオランプを演じることにより、この「1789」自体の印象もまた変わってきていて、これはこれでなかなかのものになっていました。
当日は休日で団体客も多く、初めての観劇の方もたくさんいらしたかと思うのですが、この公演を観て、きっと「良いものを見た」、「宝塚はなかなかやるじゃないの」という感想を持たれたと自信を持って言えるような公演になっていました。
また、早乙女さんのオランプからの影響もあると思うのですが、トップ娘役の愛希れいか(まなき・れいか)さんのアントワネット妃が大きな進化を見せていました。
特に早乙女・オランプに対する母のような、そして女性同士の「愛」に対する生き方の共有者ともいえるような“大きな心”を持つ王妃としての姿がくっきりと浮かび上がってきていました。
また、そのたたずまいも、一幕ラストの群衆の歌唱の場面にすっと銀橋に入ってくるアントワネット妃の姿は、こちらもたじろぐくらいの強いインパクトがありました。
それを受けて同じく銀橋で歌う早乙女・オランプも素晴らしかったですよ、ふるえが来るくらい良かった。
どちらかというと、主役の龍・ロナンを一人の女性として愛し、アントワネット妃を案じ、そして自らの父の行く末も心配する“大人”のオランプという印象の海乃さんと、人生を必死に生きる健気な娘という印象の早乙女・オランプ、どちらも私は楽しめました。
既に両パターンをご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、どんな感想を持たれたでしょう。
トップスターの龍さんは、今が絶頂期と言えるのではないでしょうか。
龍さん独特のトップの振るまいみたいなものも随所に感じるし、歌も龍さんの良いところが存分に出ていて、もう堂々のトップという感じです。
組の様子も大きな眼差しで見渡されていると思います。
そして、龍さんも舞台で感じているでしょうが、今の月組は特に今回のような強力なミュージカルには、個々も、全体も、素晴らしい集中力を発揮できる組になったと感じます。
ミュージカルとしての今回の作品の出来の素晴らしさは特筆ものですし、ラスト、おまけのショーでも月組のパワーは感動ものでした。
あと、気付いて付け加えておきたいのが、美弥るりか(みや・るりか)さんの演じたルイ16世の弟、シャルル・ド・アルトワ役への探求心というのでしょうか、演技も、そして舞台での立ち居振る舞いも、全てが前回見たときよりも洗練されていて、うっとりと見てしまいました。ラスト、銀橋での歌唱も涙が止まりませんでした。
それから、凪七瑠海(なぎな・るうみ)さん演ずるカミーユ・デムーランの恋人リュシルを演じた琴音和葉(ことね・かずは)さん。
歌はうまいし、演技も巧み、舞台にいるだけで娘役としての麗しい存在感を示すその姿は宝塚歌劇ではなくてはならないものです。いつも感心するのです。
あと一人、フランス財務大臣ジャック・ネッケルを演じた光月るう(こうづき・るう)さん。
この人のルイ16世と、民衆との板挟みの巧みな演技がなければ、この舞台そのものが陳腐なものになってしまうのです。
物語を素晴らしいものにするのは、こういう“いぶし銀”の演技を観客に意識させずにする人がいるからです。
毎日大変だと思いますが、光月さん、よろしくお願いいたします<(_ _)>
以上が「1789」二度目の観劇についての感想です。まだまだ足りない部分もありますが、長文となってしまいましたので、この辺で!
また次回(・・今度はどの観劇になるかな?)まで、ごきげんようっ!!
【Now Playing】 Snow Castle / Walter Lang Trio ( Jazz )
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