江戸の老人はエロい??のか
『春画に見る江戸老人の色事/白倉敬彦著(平凡社新書)』を読み(見)ました。
著者の白倉敬彦さんは、浮世絵研究者で、長年に渡り現代美術から浮世絵にいたる美術書を企画編集されてきた方。
残念ながら、この本が遺作となってしまいました。
老人たちの登場する春画を丹念に拾い出し、それを老爺、老婆、老夫婦の三章に分けて、年代順に並べて見ていく。
そして、それら種々の性行動をみていくことで、江戸時代の“老人の性”がみえてくるというものです。
これは、著者も書いていますが、日本の文化、美術が他国にないものとして誇れるものではないかと思いました。
でも、今現在は、それら春画の展覧会を催すだけで大変な労苦が伴うようなこととなっているようです。明治以降の“生真面目”ニッポンが、そうさせているのでしょう。
老人同士の性以外にも、老爺と若い妾、老婆と男妾、若夫婦の営みを覗く舅・姑の姿などの春画が展開されます。
そこには、江戸時代の性愛観のおおらかさが感じられます。
老年とその性愛に偏見をもたない江戸時代の人々の姿には、日本という国の古くて新しい考え方がよみがえってくるようで、実に興味深く面白い本でした。
老人の性は、時に涙ぐましく、またユーモラスでもあり、これらこの本から感じ取られることは、「日本人の性意識の原像でもある」と、“帯”にも書かれていて、そうだそうかもしれないと深く頷いてしまうのでした。
私もこの本の数々の春画を見ていて、決して“興奮”することが本意ではないというか、そのユーモアというか、人間としての“おかしみ”のようなものがとてもいいと感じました。
今の日本人の“ゆるくない”性への考え方は、逆に男女の興味尽きない、あやしくも、愉快で、浅くて深い関係を排除しているのではないか・・と、感じるようになりました。
草食なんとか・・なんていう、そんなつまらないことは放っておいて、特に若い人に是非見て、読んでほしいと思った本でした。
中の絵はちょっとお見せできませんが、ぜひとも書店でチラ見してください、おもしろいですよ。
【Now Playing】 Every Breath You Take / The Police ( Rock )
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