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2015/10/06

[安井かずみがいた時代]・・“重い”本だった

20151003_kazumi_yasui01

9月末のこのブログに「優雅の条件/加藤和彦著」の読後感を書きました。
それに続いて加藤さんの配偶者であった安井かずみさんについて、彼女と深い関わりを持った人達のインタビューを通じて安井かずみ像、そして安井さんと加藤さん夫婦の実態に迫った『安井かずみがいた時代/島﨑今日子(集英社文庫)』を読みました。

400という頁数も重いが、内容もヘビーでした。

安井さんが訳詞家から作詞家へと翼を広げ、大躍進、売れっ子になり友達である加賀まりこ、コシノジュンコ、大宅映子らとキャンティというイタリアン・レストランを拠点のようにして財界、芸術家、様々な世界の一流の人達が集まる中で私達常人には考えられない世界を体験していく若い頃の彼女。
そのサロン的な役割を果たしていたキャンティで安井さんと出会った人達のインタビューの内容は、まさに独自のかっこいいファッションで、ロータス・エランや、メルセデスに乗り、男が安井さんを通り抜けていくのでなく、安井さんが数々の男を乗り越えていく・・そんな颯爽とした様子を語っていました。

そのときの怖い物なしの安井さんの様子は、当時としては最高に素敵な、時代をリードする女性として語られていました。
キャンティが時代の最先端をいく人達と、若者を結びつけるサロンとして機能していたことが書かれていましたが、安井さん自身がまたサロン的な役割を果たしていた人物だったのではないでしょうか。

作詞した作品群もすごい。4000曲に及ぶのです。
「恋のしずく」「シー・シー・シー」「経験」「わたしの城下町」「ちいさな恋」「折り鶴」「赤い風船」「危険なふたり」「草原の輝き」「古い日記」「よろしく哀愁」・・キリがありません。
どの曲も聞いた瞬間にその世界が広がります。特に私には「私の城下町」や、「草原の輝き」などがそう。
面白かったのは、タイガースの「シー・シー・シー」。

♪愛のピエロがかぞえた♪
♪愛のこころをかぞえた♪
たして引いてもかけても
ABC and ABC and
シーシーシーシー・・・・

沢田研二さんが歌ったこの曲。
歌詞について加瀬邦彦さんから突っ込みを受けたら、
「いいのよ、これで。これ言葉の遊びなんだから。言葉って色がついてるでしょ。」とこたえています。
そのとおり、小学生だった私にはその遊びが楽しく伝わってきました(゚ー゚*)。oO

そして、安井さんと加藤さんの結婚。
多くの安井さん、加藤さんとの関わりが深かった方達のインタビューでは、幸せそうだった、安井さんが加藤さんを下に見てしつけていた、逆に加藤さんが安井さんを厳しく叱りつけていた、互いが無理をしていた、理想のカップルだった、・・もう全員が全員異なることを言うのです。
でも、それはその個々の方達の前ではそうだったのでしょう。それぞれが夫婦のある面を見て、それが全て事実だったのだと思います。

安井さんの若くてブイブイ言わせていた時代の様子に私は惹かれました。
でも、夕食は二人で着替えて必ず一緒に・・というような、夫婦の様子には、世間的には人も羨む最高のカップルだったのかもしれませんが、私には何か違和感が残りました。

安井さんが55歳で亡くなったあとの、それまで看病に看病を尽くしたのに、自宅に遺体を運ばず、4日間も病院に安置した加藤さんの様子。
葬儀を終え、日にちもわずかしか経っていないのに、二人で買い求めた絵画を処分し、家具なども全て捨て、家の前の路上には安井さんの衣服や写真、愛用の品などが透き通ったビニール袋に入れて捨てられていた・・という話を聞いて驚きました。
安井さんとの関わりのあった人達とも全て関係を絶ち、安井さんのお母さん、妹さんともそれまで仲良くしていたのにやはり関係を絶ってしまった加藤さん。

遺骨の一部を海外で散骨したときにも、式を終えると参列者をおいてイタリアにいる新しい彼女のもとへ飛んで行って、皆をあきれさせた話にも・・・(-_-)。

一周忌を待たずして再婚、「あれだけ尽くしたのだから許してあげて」という人と、「許せない」という人がいて、真っ二つです。

吉田拓郎さんの語った、“大人になりきれていない”加藤さん像が、私には一番現実に近いものではないかと映りました。

好きになった女性に尽くすだけ尽くすことで自らの位置を保っていたのではないかと思いました。だから、“型”にはめるような結婚生活を頑なに続け、二人ともそれまでの良い関係をもっていた人達と疎遠になったようです。
そんな窮屈なことしなくてもいいのに。安井さんは自由にして、世界を飛び回ってもらうのが一番だったのでは・・、と重い気持ちで最後の方は読みました。

安井さんの最後の様子も様々な人が語っていますが、終盤・・読むのがつらかったです。
でも、安井さんの数々の作品と、安井さんが輝いていたときの様子、これは私にとって今まであまり知らなかったことで、読んでよかったと思いました。
また、安井さんという類い希な光り輝く存在があったということを知ることができてよかったと正直に思いました。
重く、心に残る本でした。


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