映画「ナイトクローラー」を見た
『ナイトクローラー(Nightcrawler)/2014年・アメリカ 監督・脚本:ダン・ギルロイ、主演:ジェイク・ギレンホール』を見ました。これまた「千葉劇場」での上映です。
場所はLA、人々が眠りにつく頃、警察無線を傍受し事件・事故現場に向かい、現場の悲惨な様子、被害者にカメラを向け、スクープを取り、ローカルTV局に報道映像のネタとして売りつける・・当たれば“一攫千金”となる、「ナイトクローラー」という職業に魅せられた男の物語です。
最初は、マンホールの蓋や、金網などをコソ泥して売るようなことをしていた男(主演:ルー/ジェイク・ギルロイ)が、偶然見かけた交通事故のスクープ・パパラッチをしている男達の不思議な仕事に興味を持ち、たちまち魅せられてしまうのです。
最初は、コソ泥で得た金で安い機材を買い、映像を撮り、一人でテレビ局に売り込みに行きます。
完全にプロ化している先達には映像のクオリティで劣り、現場に先を越されることも屡々、失敗と成功を繰り返す内にその世界に完全に魅せられ、虜になってしまう主人公。
その狂気をはらんでいるかのような表情にはゾクッとさせられるのですが、主演のジェイク・ギレンホールの演技力によるところが大きく、台詞回しもあまりにも見事で常軌を逸した主人公の様子が実にうまく表わされていました。
テレビ局の事件報道担当のニーナ(レネ・ルッツ)は、視聴者が何を求めているのかを冷酷に判断し、ルーに対し、どんどん過激かつ悲惨な映像を求めます。でも、それは私達テレビの前の人間がリビングのテレビの前で安全な状態で求めているもの、そのものです。
結局、人はこんなものなのか・・という気持ちにもなりますが、ますます苛烈さを増す主人公のルーの姿に客席の皆が完全に心を“持っていかれる”ようになり、ものすごいスピード感で突き進む物語に、飽きているヒマなど全くありませんでした。
スクリーンに描かれているロスの様子は、まるで都市そのものが生き物であるかのような怖さを感じました。これもこの映画の映像の素晴らしさがよりいっそう物語の残酷さを強調していることになるのです。
また、主演のジェイク・ギルロイが途中で雇ったアシスタントへの冷酷かつ無機質な態度、周囲の人々への理解に苦しむような様子には、今の日本でも感じる“自己本位”“無関心”“手前勝手”な人間が巧みに描かれていて、これからの近い未来の多くの人々の具現化のようにも見えて胸が苦しくもなりました。
事件現場をスクープのために変えてしまったり、警察が到着する前に殺人現場の廷内に入り込み撮影する、また、悲惨な殺し合いが起こるようにセッティングしてカメラを持ち、待ち構えるような最悪の行動をするラスト近辺には、もうどうしたらいいのか、席で手をギュッと握り、足を踏ん張っているしかありませんでした。
そしてあまりにも今までの映画に無い、意外なラストシーン・・。
人の心の深部にある感覚、欲望、残忍さ、・・多くのことを考えさせられた映画でしたが、映像、キャスティング、演技、ストーリー、全てがうまく噛み合った秀作であると感じました。
内容が内容なだけに、おすすめはしませんが、でもクールであやしい映画でした。
【Now Playing】 How High The Moon / Freddie Red Trio ( Jazz )
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