「池波正太郎直伝 男の心得」を読んだ
『池波正太郎直伝 男の心得/佐藤隆介著(新潮文庫)』を読みました。
著者は広告代理店のコピーライターを経て、池波正太郎の書生を十年つとめた人。
旅・食を楽しみながら周りの人への気遣いに長けた人生の達人ともいえる池波正太郎直伝の酒、料理の愉しみ方、ちょっとした“粋”を感じさせる作法、家族・夫婦のあり方などを説いています。
読んで行くと、今や“昭和の忘れ物”のような男の世界が語られていて、現在の男がそれを具現化したならば、家を追い出されること間違いなし!・・そんな池波正太郎譲りの頑固な“男の世界”が章立てで書かれています。
蕎麦屋で酒を飲まずしてどうするか、酒を飲まないくらいなら蕎麦屋へなんぞ入るな
ウイスキーを嗜まぬような男とは男とはいえない
男が一人静かに飲むための酒である
・・などと、いきなり冒頭からとばしていきます(^_^;)
また、ポチ袋の使い方や、手みやげをどうやって選ぶか、名刺のつくり方、使い方などの細やかな気遣いについてもご本人が楽しむかのように書かれていて、読んでいてそのあたりではリズム感さえ感じました。
父としての二人の息子への接し方では、反省や、自分の息子達への対峙の仕方などについて真摯に書き綴られていて、著者の“真っ正直な頑固さ”に心が揺すぶられました。
そして奥さまとの結婚から今までの人生の歩みについても、男の心得というよりも、威張っているようでいて、いかに妻に良い思いをしてもらうか、感謝の気持ちを表わすか、などが書かれていて、著者の頑固だけれど実は優しいところが垣間見られ、そこではしみじみとしてしまいました。
それから仕事柄、旅から旅へと全国、世界を歩き回る著者と師匠の池波正太郎さん直伝の“旅のコツ”なども披露され、ちょっと私達には出来ないような旅の様子がとても楽しいのでした。
締めは、どうやって男の生涯を終えるか、それまでの過ごし方は、と、著者自ら人生を振り返るような感じで締めくくっています。同級生の例なども挙げていますが、私もこれを読んで自分のこれからの人生の終盤をどうして過そうか、などと神妙になってしまいました。
今のご時世では考えられない男女のあり方なども書かれていて、そのまま若い人が読むと反発も感じるかもしれませんが、でも、その基本的なところは心に響くものがありました。
もう一冊、同じ著者の本を同時に手に入れたので、それも読後にまたこのブログでご紹介したいと思います。
さあ、次はどの本にしようか。
【Now Playing】 Stardust / Nat King Cole ( Jazz )
« 「三つの月」を見ました | トップページ | Beatles Meets The Cats !! »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「家族・親子」カテゴリの記事
- 「父の縁側、私の書斎/檀ふみ」を読みました。(2022.08.09)
- 伊集院静さんの「女と男の絶妙な話。-悩むが花-」を読みました。(2022.07.13)
- 映画「シング・ア・ソング! -笑顔を咲かす歌声-」を見て来ました。(2022.05.22)
- 「強父論/阿川佐和子」を読みました。(2022.04.30)
- サヘル・ローズさんの「言葉の花束」を読みました。(2022.04.19)
「お酒」カテゴリの記事
- 太田和彦さんの「居酒屋と県民性」を読みました。(2022.07.28)
- 太田和彦さんの新刊「75歳、油揚がある」を読みました。(2022.07.12)
- 「酒場歳時記・吉田類」を読みました。(2022.02.16)
- 「おじさん酒場」を読んだ。(2022.01.14)
- 太田和彦さんの「銀座の酒場を歩く」を読んだ。(2021.12.27)
コメント