「下駄でカラコロ朝がえり」を読んだ
『下駄でカラコロ朝がえり/椎名誠著(集英社文庫)』を読みました。
これは椎名さんが「サンデー毎日」に連載していたコラムをまとめたシリーズ本です。
2010年11月から翌2011年8月にかけて書かれたもので、割と最近の椎名さんの様子が書かれていました。
そんな中で、気になった部分について少しふれてみます。
ブックオフに代表される新古本屋を見て育った子供達がそれを書店だと思って、やがて大学などに入り都会にやって来た時に、都会のあらゆるジャンルの本が揃っている大型書店や、神田などの本物の古書店を見たときに、そのめくるめく知識の多様性との遭遇がすでに知的好奇心を集約して吸収していける時期を逃しているという話でした。
その大事なときに何をしているかというと、携帯電話で無駄話をし、誘蛾灯に導かれてマニュアル食品のレストランに入り、ゲームセンターで無為な時間を過し、家に帰ってテレビを見る・・そこには「ただタレントが大笑い」していればいいという、クソの垂れ流し番組が放送されている・・。
というくだりでした。
あまりにも同感する部分が多くて、頷いたり、うなだれたり、・・でした。
文化の多様化に逆行してなにかわけのわからない「力と意図」によってますます単純思考と行動に集約されていく・・、そうだよ、そのとおり。
また、かつてドキュメンタリーの仕事で行ったアリューシャン列島のアムチトカという島での話。
ここは日本軍占領後に、アメリカ・カナダ連合軍に奪還され、その後アメリカが広島型原爆の250倍の核爆発の地下実験を行ったところだったのだそうです。
島は爆発で変形し、山がへこんでそこが湖になっていたとのこと。
どこもきれいに見えたのに、現地では食事用に水を汲むときはガイガーカウンターで放射能を測っている。
地下1000メートルのところで35年前に行われた核実験の影響はまだまだ残っていて、測定すると完全に危険ラインに入っていたとのことです。
そして、やはり椎名さんが行ったタクラマカン砂漠の楼蘭でも30年以上にわたって核実験を何度もやっていて、それによる死者数が数十万人と言われているが、それもうやむやに隠されているという話が書かれていました。
福島のことを楽観視している人達への椎名さんの書きっぷりは、激しいものでした。
自分で作っておいて、制御も思うに任せず、災害への対策がなっていなかったことがあの震災で判明し、しかも廃棄物も含めて将来的な見通しは立っていない原子力発電。
それを今後も稼働し、外国に売り込もうとまでする人がいる・・信じられない。
他にも印象に残るところはありましたが、上記ふたつの話が一番インパクトがありました。
【Now Playing】 Glass Onion / The Beatles ( Rock )
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