落語家に通信簿をつける?!
『落語家の通信簿/三遊亭円丈著(祥伝社新書)』を読みました。
これは落語家で、かつて新作落語の旗手として春風亭昇太さんなどの新作落語家を引っ張ってきた円丈さんが書いたものです。
文楽、圓生、小さん、正蔵などの伝説の名人四人から、個性派の橘家円蔵(書いている今、訃報が入りました、かつてテレビで見ない日は無いくらいの人気者でした)、小三治らの個性派、笑点メンバーから若手、立川流の噺家、新作派、あの三平ファミリー、そして上方落語の名人まで、同業者であり、協会・団体の異なる噺家もいる中で、書きにくいことこの上ないと思うのですが、かなり踏み込んで、円丈さん正直に書かれていると思いました。
円丈さんというと、私には紋付きの「紋」のところにローリング・ストーンズの『べろマーク』を着けて高座に上がり、奇想天外な新作を披露している姿が思い浮かべられます。
近年ではあまりテレビでお見かけすることが無くなってしまいましたが、この本を読むと、まだまだ若い者には負けない、新作だってこれからも作るぞ、という気概が感じられました。
円丈さんが重視しているのは、「落語は笑うために聞きに来るもんだ」ということ。
面白くもなんとも感じない噺家、ネタにはズバッと斬り込んでいました。
そして、初代の林家三平師匠に対する近年のネタを文書化したものを読んで小馬鹿にしているような輩に対しても厳しい批判をしていました。
私も三平師匠の落語だけでなくあらゆる爆笑熱狂空間をテレビなどで見たことがあるのですが、寄席でもテレビの番組でも、その場所が笑いの空間として炸裂していたのを思い出します。
立川談志師匠については、割と冷静に観察し、古今亭志ん朝師匠と比べると劣る部分があるのではないか、また志ん朝師匠とのエピソードが書かれる中で、意外と闇の部分を抱えたまま亡くなったのではないか、ということも書かれていて、非常に興味深いものがありました。
私の談志師匠の印象はというと、あの落語界の分裂騒動の前、円楽師匠と組んであちこちを(海外を含め)回り、そしてテレビ、ラジオにも共演し、互いに芸を磨いていた頃の若々しく、おもしろくておもしろくてたまらなかった「六尺棒」「明け烏」などの高座を思い出します。もちろん、円楽師匠も「中村仲蔵」や「野ざらし」など、とても良かった・・。
同じ噺家から見たそれぞれの落語家に対する通信簿、見ているだけで寄席に行きたくなりましたが、とりあえず今、USEN放送で「落語チャンネル」を聞き、また自己の落語熱を少し復活させようかと思い始めました。
【Now Playing】 ラジオ深夜便 / 小松みゆき他 ( NHK-AM )
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