1992年の瀬戸内寂聴さんの本を読んだ
『あきらめない人生/瀬戸内寂聴著(集英社文庫)』を読みました。
これは、1989年から1992年まで、とあるカード会社の月刊誌に連載されたものをまとめたものだそうです。またまた例によりブックオフにて108円で買い求めました。
本文中で瀬戸内さんは“古稀”を迎えられていますが、日本中を飛び回り、寺の運営、講話、講演、様々なイベント・儀式への出演・出席、大学の学長としての仕事、“カンヅメ”になっての執筆活動などものすごく忙しい日々を過しておられる様子がわかりました。
今でもまだすごく忙しいのかもしれませんが・・。
日々の瀬戸内さんの“お務め”や執筆の仕事の中で感じられたことや、男と女の人生の機微にふれたり、小説にされた「良寛」さまと尼僧「貞心尼」とのプラトニックな関係のこと、五十五年ぶりに同窓会で会った同級生たちとのこと、人生の終末に際しての話など、どれも味わい深く、しみじみと、そしてドキッとしながら心に入ってくる話題ばかりでした。
中でも一番私の心に残ったのは、「私は、芸術はすべてエロスの香りのしないものに興味を持ちませんし、芸術とはそもそもエロスから発生したものだという考えを持っています。」という瀬戸内さんの言葉でした。
「私の小説が、あるとき、エロ小説と呼ばれたのは、読む方の教養の不足と品性が下劣だったのだろうと思いますが」とまでおっしゃっていますが、そのとおりだと思いました。
〇人間の生は性によって発生し、性によって終焉を遂げるのです。
〇人生から性を差し引いて、なんの生きがいがあろうかと思います。
上記ふたつの重要な発言は、今の「男」と「女」に不足しているものの最たるものだと私も感じているのです。
男と女の互いに永遠にとけぬ謎、それがすべての男女の人生模様に影響し、人生そのものに色を彩なすのだと思うのです・・。
私の周囲にいた若い人の発言に「自分の時間を大事にしたいので付き合う相手には時間を拘束されたり、面倒くさいことをしなくてはならないような人は困ります。」なんてことをよく聞きました。
さっきまで会っていたのに、駅などでバイバイした直後に「もう会いたくなった、話をしたい」となるのが男であり、女ではないかと・・私は思います(*^_^*)
面倒くさいことを言われ、投げかけられ、狂おしいほどの悩みを突きつけてくる!それが、その苦悩が“愛”の、“恋”の、“人”の人生の光となり影となるのではないかと・・思うんだけどなぁ・・…σ(^_^;)
ついつい、感情が入ってしまいましたが、私の好きな音楽、舞台、映画、文学、などは全てエロスが根底にあるのではないかと瀬戸内さんの文を読んであらためて認識したのでした。
というわけで、明日も極限のエロスを感じながら音楽を聞いたり、本を読んだり、いろいろと心に染み込ませていこうという思いを強くいたしました。
【Now Playing】 Within You Without You / The Beatles ( Rock )
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