丸谷才一さんのベストセラー小説・・とてもよかった
『女ざかり/丸谷才一著(文春文庫)』を読みました。
1993年の単行本(文庫化1996年)ですが、そのたたずまいは昭和初期のような風格がありました。文も旧仮名遣いで書かれているのですが、流れるような文体で、とても読みやすいのです、これには驚きました。まったくよどみの無い文には舌を巻くばかり。
主人公の女性は大新聞の論説委員、そこで書いたコラムがもとで政府から圧力がかかり、その座を追われそうになります。
友人、家族、親戚、周囲にいる独特の個性を持つ一筋縄ではいかないような人達の力を借りて窮地を脱しようとするのです。
しかも、単なる女性論説委員と政府、会社のお偉方の目論見の攻防だけではなく、本人の子持ちバツイチ、そして妻子ある男性との長い恋愛模様を抱えているという境遇、そこに言い寄ってくる男の面白さ、政府との攻防に協力してくれる叔母が映画女優で現在の首相とかつて“なさぬ仲”であった物語まで語られ、それがやがて首相公邸で深夜二時に叔母と共に首相、そして精神を病んでいた首相夫人との再会と摩訶不思議な遭遇・・ここが最大のクライマックスシーンになっていた・・。
息をもつかせぬドキドキするような展開に、440頁にも渡るこの小説を一気に読んでしまいました。当時かなりのベストセラーだったそうですが、それもうなずけます。面白い小説でした。そして“文”そのものに味わいがありました。
なかなか今の小説でこんな魅力のあるものはないと思いました。
登場人物それぞれにも抱えている“ストーリー”があり、またそれぞれが魅力ある人物に描かれていて、「男と女の物語」として読んでも深いものになっていたと思います。
読み終えて、清々しい充実感のある本でした。
【Now Playing】 火焔太鼓 / 橘家圓蔵 ( 落語 )
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