「チーズと塩と豆と」を読んだ
『チーズと塩と豆と/角田光代・井上荒野・森絵都・江國香織著(集英社文庫)』を読みました。
上記四人の直木賞作家が《角田/スペイン・バスク》、《井上/イタリア・ピエモンテ》、《森/フランス・ブルターニュ》、《江國/ポルトガル・アレンテージョ》を舞台に、登場人物も日本人ではなく、それぞれに食べもの・味覚を人々の愛とからませて描き出した極上の四編が収められていました。
どれもこれも上質の映画を見ているような感覚になり、・・映画にしたらこれまた素敵だ
、とも思ったのですが、読んでいて味も素っ気もない田舎独特の食べものが“key”として登場し、小説の内容と共に深い味わいとなり、読んでいるあいだ中、素敵な時間を過すことができました。
特に自分の育った田舎の環境が、食べものというのは生きるためのものであり、そういう食事しか認めない、日々同じようなものを食べ、“しきたり”を守り、という窮屈な世界を飛び出した青年の話などは、のちのち青年が料理人となり田舎に帰ってきてからの「ああ・・死んだ母の言っていたことはこういうことだったのか・・」という、それまでの“仕掛け”が巧みだったので感動的な衝撃を受ける話などもあり、物語ラストで主人公が大地にひざまずき、慟哭するシーンには、私も涙が思わず流れてしまい、想像以上の感動を味わいました。
・料理人の父に反発し故郷を出た娘
・意識の戻らない夫のためにミネストローネを作りつづける妻
・(先に書いた・・)生きるための食事しか認めない家に育った青年
・愛し合いながらすれ違う男同士の恋人たちの晩餐
それぞれが心にさわやかな風のような感動を与えてくれました。
これも“おすすめ本”だなぁ。
【Now Playing】 In Love With Being In Love / Julia Farino ( Jazz )
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