映画「愛しき人生のつくりかた」を見ました
映画『愛しき人生のつくりかた(Les Souvenirs)/2014年仏 監督:ジャン・ポール・ルーヴ 主演:ミシェル・ブラン、アニー・コルディ、マチュー・スピノジ』を見ました。
葬儀から始まり、葬儀で終わる・・そんな映画でしたが、決して暗い映画ではなく、どこにでもある家族、人々の暮らしの中にあるそれぞれが自分の置き場を常に探しているような様子を描いた静かでやさしい人生物語でした。
映画冒頭で夫を失った老人。ひとり暮らしを心配し、息子は老人ホームに入ってもらうことにします。
その間に内緒でその年老いた母親の住まいを売ってしまうという展開。
映画の主役は年老いた母とその息子(郵便局を定年退職、まだ仕事をしている妻とはうまくいっていない、人生暗中模索・・)、そして祖母を慕い、心配する孫の三人が主要人物となって物語は進んで行きます。
活発でユーモアとウイットの効いた祖母はやがて老人ホームを抜け出して行方不明になってしまいます。
送られてきた葉書の消印から祖母の居所を突き止めた主人公の孫息子は、祖母がかつてその地の小学校に通っていたことを聞き、三年生のときに戦争の状況から学校をやめて別の地に戦禍を逃れるため移動することになったことを知ります。
そして、まだ残っていたその小学校の先生にお願いして祖母に小学生と一緒に一日授業を受けさせてもらえるようにします。祖母は子供達と勉強し、遊び、昔のことについて質問を受け人生の光輝く瞬間を取り戻すような一日を経験します。
その一日のあとの急展開は、“ネタばれ”になるのでここでは書きませんが、哀しいのにうれしさの涙を流すような映画になっていました。私も涙をこぼしてしまいました。
老母を心配する定年退職したばかりの男(ミシェル・ブラン)のユーモラスで、かつ悲哀を感じさせ、妻との関係に悩む姿はどこにでもいる“お父さん”の姿でした。
これがまた絶妙の加減で素晴らしい演技を見せてくれました。
孫にあたり、全編に渡り祖母、父母、周囲の人たちとの関係、そして一目惚れした女性とのこと、おかしな友人との関係、深夜勤務のバイト先の主との不思議なやり取りなどを自然に演技したマチュー・スピノジ。憎めない彼の演技も、やさしい現代の若者の姿をうまく見せてくれていました。
ちょっとした脇役として出てくる、ドライブインの店員(なぜか人生のキーワードをレジ向こうからいとも簡単にアドバイスしてくれる)、マチュー・スピノジの“超軽い”友人(とにかくいい加減だが、でも“いるいる”こんな男、でもいい人だよ基本的にみたいな人)、そしてマチューが深夜バイトしていたホテルの主も人生のターンテーブルがくるっと回り、通常の人たちとはどこか視点が異なっているような角度からしみじみと深い言葉をくれたりします(実はこの映画の監督、ジャン・ポール・ルーヴそのひと)。
ちょっとした脇役まで細かな“振り”がなされていて、素敵な映画でした。
そして画面に現われるパリと、祖母が行方をくらまして向かったノルマンディー地方の素晴らしい海辺の景色を持つエトルタの風景も映画をよりいっそう魅力的なものにしていました。
どこにでも、だれにでもある人生の身の置き場への悩みのようなものを描いた作品でした。
よかったです。
【Now Playing】 さかさまの空 / スタジオUSEN ( Jazz )
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