「幸福について」を読んだ
『幸福について/ショーペンハウアー著 訳:橋本文夫(新潮文庫)』・・原題「処世術箴言(しんげん)」を読みました。
著者のショーペンハウアー(1788-1860)は、ドイツの哲学者。著書も多数あるようですが、今回読んだのは、1851年の「筆のすさびと落ち穂拾い(随想集)」に載った最大編「処世術箴言」の全訳です。
この文庫本の初版発行自体が昭和33年3月となっていて、古いものですが、でも、読み始めて全く違和感の無い現代の私達にそのまんま通じる「幸福論」となっておりました。
出世欲や、名誉欲、金銭欲、などを満足させることによって幸福が手に入るのかというと、・・ちっともそんなことにはならない。簡単に言うとそんなことから始まっていました。
つまりそれらは“人から”認められたり、うらやましがられたりして初めてちょっとうれしいような気分になるわけですが、でも人の心は移ろいやすく、自分が思っている地位にたどり着いたとしてもそれが“ひと”から見て尊敬の対象になるわけでもなし、いくらお金を持っていると、財産があるといっても、立派な家を持とうが、いい車に乗ろうが、別にどうということもなく、いくら物欲的なものを追求してもキリが無いのです。
だから、「幸福」を手に入れることはそんな人達にはそう簡単なことではない、というか永久にそれを渇望しつつ亡くなっていくのでしょうね、自分の銅像なんか建てちゃって。
また、社交的であることが幸福に寄与する一因となるだろうと、私などは思っていたし、それがないのでたいした幸福でもないのか、とも思っていました。
でも、それがまた不思議と人に気を回し、気を揉み、ある一面では幸福にとってマイナス要素となる部分もあるやに書かれていました。一理はある、と思いました。
この本にも書かれていましたが、自らの精神世界を見つめることができる環境と自己を持ち、そしてその精神世界を突き詰めながら、それを表現できるようなことができれば、それは「幸福」のひとつの形である・・、そんなことも書かれていたと思います。私の読み方が間違っていなければ・・。
著者は、よくも感情を露わにせずに、世情の様々な事象について冷静に分析し、結論を導き、落ち着き払ってこんな長文をものにしたものです。
厭世的でもありますが、“あきれる”“あきらめる”なんてことも人間には必要じゃないか、などと私も愚考いたしました。
人のあり方
人の有するもの
人の与える印象
それらについて、深く考える時間となりました。
この本の帯に「大反響 いま売れてます」と書かれていますが、“売れていい本だ”、と思いました。
【Now Playing】 菊江仏壇 / 桂文乃助 ( 落語 )
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