梶原しげるさんの日本語本を読んだ
『不適切な日本語/梶原しげる著(新潮新書)』を読みました。
梶原さん、文中で何度も「そんなことどうでもいいじゃないの」と言われている様子が書かれていましたが、私も同様、よく「つまんないことにこだわんない方がいいですよ」と言われています。もちろん、“言葉”についての様々なこだわりについてです。
身近な例でいうと、「お弁当あたためますか?」『大丈夫です』・・大丈夫ってなんだ?・・といつも思うようなことです。
「結構です」とか「十分です」「遠慮します」「間に合ってます」などという態度で相手を傷つけまいとしているらしい『大丈夫です』・・・。やっぱりおじさん気になりますよ。
『勇気をもらう』『元気をもらう』ってのも、使う気にもならないし、聞いただけでいやな感じが全身を走ります。
この最近の常套句は梶原さんの言うとおり、“陳腐”で“プア”です。
これを口にしておけば、誰からもおとがめがない、他人を傷つける事もない。言葉というより“印”。
これまた危ない橋を渡りたくない人、官僚や政治家のように無難な事しか言わない人向けの言葉だと私も思います。
『サプライズ』という言葉も、「驚き」や「意外」という意味を超えて、“驚かせ祝い”という事象をさす言葉に変化しているように感じます。
この言葉の使い方にも違和感がありますが、この意味での“サプライズ”をやられる人間のことをもちっと考えてみろっ!と言いたくなります。「迷惑なんだよ、サプライズ」。
ヒット曲が言葉をつくる、という章もありました。
おなじみのイルカさんのヒット曲、「なごり雪」は以前にも書きましたが、もともとそんな雪の表現は存在しませんでした。
せいぜい「名残の雪」という表現をするくらいしかなかったのですが、今や「なごり雪」は日本気象協会によって新しい三月の季節の言葉として選ばれています。ヒット曲の力はたいしたものです。
「花街」というのも三善英史さんのヒット曲から『はなまち』という読み方が普及していますが、もともとは“かがい”なのではないでしょうか。
「わたしの城下町」の二番冒頭で「家並が途切れたら」とありますが、これも「いえなみ」が現在普及していますが、この安井かずみさんの詩が出る前は、「やなみ」だったのだと思います。
決定的なのはグレープの「精霊流し」。『しょうろうながし』と読んでしまいますが、ほんとうは「しょうりょうながし」だったのだと思います。
これは「類音けん引」といって、「灯籠流し」と音が似ているのでそれに引っ張られて“しょうろう”になってしまったんでしょうね。でも、今や『しょうろうながし』の方が圧倒的優勢です。
最後に、私が同感した言葉づかい。『そうなんですね』。
インタビューしている女性アナウンサーが多用しているのを聞きます。
「そうなんですか」と、『か』を付ければ、「そうなんですよ、・・・」と話が続くものと思うし、聞かれた方も話が盛り上がるかと。
ほとんど機械的に誰かが何かを言ったら「そうなんですね」・・(´・_・`)
会話がつながらず、「ズドン」とそこで終わってしまうのがわからないのか、といつも思っていました。
これも疑問形で問いただしたら“失礼だ”とでも思っているらしい・・。相手の失望にも気づいていないのでしょう。
前出の『大丈夫です』と同じように、相手に気を使いすぎるばかりに逆に失礼なことになっているのです。
・・あぁ、久し振りに言いたいことを言ってすっきりした感じ…σ(^_^;)
今や周囲の人たちがほとんど何も感じなくなっても、最後まで私は上記にあげたように、いろいろ感じていようと、あらためてこの本を読んで思ったのでした。
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