映画「太陽の蓋」を見ました
『太陽の蓋/2016・日本、監督:佐藤太 主演:北村有起哉』を見ました。
この映画は東日本大震災により福島原発事故が発生、その直後からの官邸と東電の動き、そして映画の主役は新聞記者なのですが、その報道の様子が淡々と首相はじめ“実名”で描かれている映画でした。
それが妙にリアルで、「誰かを悪者にして」溜飲を下げるような物語的な映画ではありませんでした。
当時私は東京に勤務していましたが、あのときの緊張感、怖れ、その後のテレビでの枝野官房長官の会見を昨日のことのように思い出しました。
嘘を言っているのではないか、本当のことを誰が知っているのか、テレビで爆発している原発の画像を見てこの報道はおかしいのではないか・・と、次々と起こる事象についていけない自分がいました。
実際の官邸の人たちの動きと、ちっとも現地の状況を伝えない東電、現実の状況に追いつけない首相、官房長官、副官房長官らのあせりと、映画の中でも表現されていましたが、まるで怪物のように事態をどんどん悪化していく原発に絶望感さえ漂わせる官邸の当時の様子が不気味なくらい冷静に描かれていました。
そして、福島で非難を余儀なくされた人々、原発で仕事をしていた若者が非番であったにもかかわらずいてもたってもいられず、現地に向かう様子、さらに東京の人々の不安感、国外退去する外国の人たち。
「何も知らないのは日本人だけ」という退去する人の言葉にもドキッとしました。
映画では一年経ち、二年経った段階で主役の新聞記者が当時官邸にいた人たちや、福島の人たちから聞き取りをするシーンがあるのですが、原発で働いていた若者の「まだ何も終わってないんですよ。あのとき、日本中でテレビを見ていた人たち、今はどう思ってるんですかね・・・」という言葉に一番インパクトを受けました。
「原発はコントロール下にある」と言い切ってオリンピック開催という結果を得た人間がいました。何をコントロールしているのでしょうか。オリンピックをやれるくらいの余力があるならコントロールしているはずのものをもっと何とかできないんでしょうかね。
その後熊本・大分でも震災があったのです、オリンピック開催自体を返上して、その予算も使って全力で復興に取り組んだらいいのではないですか?私の言っていることはおかしなことなんでしょうか。
原発を動かさなくては日本の成長はないと言っている人たち。
人口がどんどん減っていくのになぜ成長が未来永劫続くと幸せな考え方ができるのでしょうか。
あれだけ、原発というものは事あれば人間というちっぽけな存在にはどうにも出来ないものであるとわかって、懲り懲りしたと思っていたのにわずか数年で忘れちゃうんですね。
忘れちゃうで思い出しましたが、第二次世界大戦が終わり、人々は死に、日本中が焼け野原になり、もう戦争は懲り懲り、永久に放棄しましょうと憲法を作ったのに、どこかの政党の憲法改正草案には第二章の「戦争の放棄」という言葉がまるまる削除されていました。
70年経ったら「人間は戦争してはいけない」というあのときの人々の慟哭のような願いも忘れられてしまうんですね。人間がいかにおろかな生物であるかということがよくわかりました。
この映画は130分の長さを感じさせない緊張感ある、しかも見ていてあのときことを思い起こさせるつくりになっていました。
喉元過ぎれば・・と、自分がそんなことになっているかもと感じるあなたは映画館に行かれるとよいと思います。そうでない人にも行ってほしいけど・・。
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