花組の古い演目「テンダー・グリーン」のDVDをいただき数十年ぶりに見ました
宝塚歌劇・花組大劇場公演「テンダー・グリーン」のDVDをヅカ友の女神が録ってくださって数十年ぶりに見ることができました。
実はこの演目は東京には来なかったものです。当時はそういう公演もあったのです。
私は別の花組公演を東京で生まれて初めての宝塚として見たのですが、すっかり気に入り、同じ花組のこの公演を録画で見せてもらいました。1985年に公演されたものですが、そのときにすっかり気に入りました。そして今に至ります。
なので1980年代後半以来にこの画像を見たことになります。
今ではベテラン座付作家となった正塚先生の大劇場デビュー作だったらしいです。
あらためて見ると「よくこれが宝塚で、しかも大劇場で公演されることについて了解が取れたな」と思うくらいに宝塚らしくありません。今でも驚き。
ほとんどセットは固定され、上から緑色のツタがぶらさがった超シンプルな舞台上でほとんどのシーンが進行しています。
SFアニメのような悪者側と、牧歌的でハイジの村のような植物と同化して暮らす人々。
その設定を理解するまでに最初は戸惑いばかりでたいへんだったのじゃないかと推察いたします。
冒頭から、それまで平和で心の中の会話だけで暮らしてきた森の住人達は言葉も満足に覚えておらずカタコトでセリフを話していて、もうふざけているのかと思うくらいの状況。始まってから15分くらいで怒り出す人もいたんじゃないかと想像いたしました。
事実、聞いたところによれば、オールドファンのおばちゃま達にはずいぶんと厳しい評価を下されたようです。
でも、このSFと牧歌的な童話の世界が同居するまったく宝塚らしくない作品は、だんだんと多くの人の心をとらえはじめたらしいです。
あとから見た私の心も・・。
やがて演じている花組の組子にも、ファンにも、宝塚歌劇団にも大切な演目になっていったのだと思います。
そして人間っていうものは何が大切で、何のために生きているのだろう、という普遍的な問題に真っ正面から取り組んでいるこの不思議な魅力を持ったミュージカルは阪神淡路大震災や、多くの市民が困難に立ち向かう場面でタカラジェンヌによって歌い継がれてきました。
この公演に二番手として出演されている大浦みずきさんの追悼の会でも、当時の花組生が集まってこのテーマソングを歌っていました。みんな「なーちゃん、なーちゃん」と泣きながら・・。
今や、宝塚にとって大切なテーマソングを生んだ公演として記憶されているのです。
画面に映る大浦さんの若くて、正義感あふれ、やさしく、力強く、誠実で、何ものにも負けない様子。大浦さんそのものです。涙が止まらなくなりました。
見れば見るほどこのテンダー・グリーンの持つ人間ひとり一人への“いとおしさ”が伝わって来てあの時の感動がそのままよみがえりました。
この演目で森の少年ナーヴを演じた青柳有紀(あおやぎ・ゆき)さんは、娘役ですが少年を演じ、ボーイソプラノで美しい歌を歌い、星の支配者から逃げて来たソーン(主演:高潮巴/たかしお・ともえさん)と、森の人たちとの心の架け橋になりました。
あまりに感動した私は、録画を見た直後にその青柳さんに手紙を送り、いてもたってもいられないその感動を伝えました(今にして思えば、タイトルロールでトップ、二番手のあとに名前が流れています、そんな人にいきなり「あなたは素晴らしい」なんて手紙を送ってしまったわけで・・恥ずかしい)。
青柳さんから一週間もしないうちにお返事をいただき、「今は宝塚大劇場公演ですので、見に来て」とのこと。宝塚まで出掛け、パーティーに呼んでいただき、ご本人とお会いし、お話をさせていただき、一緒に写真を撮っていただくことが出来ました。今じゃ信じられないことです。録画を見てからほんのわずかの時を経てそんな夢のようなことになったのです。
それからが、私の宝塚への恩返しとなり、今に至るのです<(_ _)>
いいものをまた見ることが出来て幸せです。女神ほんとうにありがとうございました。
なぜ 苦しむのだろう
なぜ 悲しむのだろう
生きていることが
つらいなんて
思いたくはない
生命は愛しいと
抱きしめてみればいい
その手のぬくもり
伝わるなら
恐れは消え去る
テンダー・グリーンのテーマソング「心の翼」の一節です。
つらいときに、この歌詞を思い出すことが多いのです。
【Now Playing】 心の翼 / 宝塚歌劇団・花組 ( サウンド・トラック )
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