映画「ベストセラー」を見てきました
映画『ベストセラー(GENIUS)-編集者パーキンズに捧ぐ-/2015年 英国 監督:マイケル・グランデージ 主演:コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン』を見てきました。
時代は1920年代から1930年代のニューヨーク。
コリンとジュードが演じているのは実在の名編集者と天才作家。編集者パーキンズのもとに無名作家のトマス・ウルフが原稿を持って訪ねるところから始まります。
そして、トマスの才能を見抜いたパーキンズは編集者として、未熟なトマスに対してある意味先生として、親として、厳しいところを見せます。
膨大な原稿に削除の添削をどんどん入れ、枚数も激減させ、肉を削ぎ、物語の骨格をはっきりとさせ、トマスの処女作「天使よ故郷を見よ」を生み出します。
まさに編集者と作家の地獄のような作業でした。
このあたりの映像での見せ方は“大人”な映画でした。二人の素晴らしい演技と重厚な映像によって、濃厚な時間を観客席で楽しめました。
処女作はベストセラーに。
第二作・超大作への取り組みは、編集者のパーキンズに家庭への犠牲を強い、トマスの愛人でパトロンのニコール・キッドマン演じるアリーンは編集者と作家の密接な関係に異常な嫉妬を見せ、物語は大波乱の様相・・。
大きく揺れる主役、編集者と作家の二人と、その周囲の人たちの運命の様子が、この物語の佳境となります。
特にトマスの愛人であり、パトロンであるニコール・キッドマンのアリーンが演じる常軌を逸した行為は、これもまたこの映画の“肝”になっています。
天才をめぐる編集者とその家族、愛人、さらに過去にパーキンズによって世に出たヘミングウェイとフィッツジェラルド達が絡んできて、有名作家のその後の人生模様も物語に深みを加え、内容のある素晴らしい映画となっていました。
常識的で、編集人としての矜持があり、トマスにとっての育ての親的なパーキンズがトマスに連れられ、ジャズ・バーに行って、「音楽に興味が無い」といいつつ、トマスがパーキンズの好きな、ジャズではない曲をミュージシャンに頼んでアドリブでジャズにしてもらい、演奏を聞くシーンでは、次第にパーキンズも脚が動き出し、“ノって”いくところがあり、それもジャズの演奏含めパンチの効いたいい場面でした。
ここは“動的”な印象が強く、心動かされました。
トマスのあまりにも常人とはかけ離れた人格がパーキンズやその他の人たちとの軋轢を生み、やがて孤独を感じるようなことになるのですが・・。
ラストの感動的なシーンはぜひ映画を見てください。
この映画では、パーキンズは家でも職場でも帽子を脱がないのですが(とても不自然に見えていた)、でも最後の最後、病床のトマスからの手紙(メモ)を読むときに初めて脱帽します。・・このときのためにわざとか・・と思いました。
手紙を読むパーキンズに、ついに私も客席で泣き濡れてしまいました。
とてもいい映画でした。素敵な映画というのはこういう映画だと千葉劇場をあとにするときに思いました。
【Now Playing】 橋幸夫の地球楽団 / 片岡鶴太郎 ( TBSラジオ )
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