映画「ニーゼと光のアトリエ」を見てきました
映画『ニーゼと光のアトリエ(Nise-The Heart of Madness)/2015年・ブラジル 監督:ホベルト・ベリネール 主演:グロリア・ピレス』を見てきました。
1940年代の精神病院が映画の舞台。
そこにやってきたひとりの女医ニーゼ・ダ・シルヴェイラ(役:グロリア・ピレス)が見たものは、毎日のように繰り広げられる電気ショックなどの暴力的な治療や、ロボトミー手術で脳の一部を切断してしまう療法、また患者の扱いも同じく暴力的だし、とても人として扱われていないような状況でした。
それが当然のことであった当時の医学、さらに医師たちの行為に驚き、自分なりの方法で患者と対峙しようとするニーゼでしたが、「作業療法」の行われている閑職に回されてしまいます。
それからニーゼの取り組みが始まりました。
患者に対する暴力的な対応や、威圧的な態度も戒めさせ、患者にはそれまでの壊れたものの修理などではなく、絵の具や粘土などを与えて彼らにとって自由な表現という今までの病院にはなかった環境を提供します。
つまり、病室でなく、アトリエにしていくのでした。
最初は、なかなか絵筆も持たなかったり、絵らしい絵にもならなかったものの、やがて心理療法の常識をくつがえすほどの成果を見せ始めます。
でも、当時の最新治療にしか興味のない男性医は彼女のやり方を認めようとはしません。
だんだんと描かれるものに常人では考えられない作品性が現われ、患者の状態もよくなってきた中でバスに乗って自然の中に患者を連れて出掛けたり、お祭りを催したり、ある程度の回復を見せた患者の中には家に帰り、社会復帰しようとする者も現われます。
そんな中でも、それを“やっかんだ”のか、おそろしい妨害行為も有り、ニーゼの周囲はいつもたいへんなことが起こるのです。でも、それでもいったんは動揺を見せるものの、信じるところを突き進むニーゼの姿には神々しさまでも感じました。
アートや動物を介して人を癒した実在の女医「ニーゼ・ダ・シルヴェイラ」の気高さは、この映画で十分伝わってきました。
非常に真面目で、まっとうな取り組みで撮られた映画でした。
患者役の役者の演技も見事で、座席でもずっと力が入ったまま見てしまい、いいかげんな気持ちでは見られない映画だと思いました。
ラストでの患者達の作品と先生の取り組みが報われるところも感動のうちに見入ってしまいました。
東京国際映画祭グランプリで、最優秀女優賞も受賞しているこの作品、メジャーな映画館では見られないと思いますが、興味を持たれた方にはぜひ見ていただきたいです。
【Now Playing】 ラジオシアター・友近の東京八景 / 友近 ( NHK-AM )
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