「ため息の時間/唯川恵」を読んだ
『ため息の時間/唯川恵著(新潮文庫)』を読みました。
この著者の本を取り上げるのは「とける、とろける」以来かもしれません。
著者は女性ですが、この九遍の短編集となっている「ため息の時間」は、いずれも主人公は男性で、つまり女性の唯川さんが男性の立場で書いているものとなっています。
ここに登場する男性は女性が考えている男性像の典型なのでしょうか、“都合のいい女”が好きだし、妻に対しては恋愛感情を求めない男が多い。けっこう古いタイプの夫像を体現している感じです。
自分の女好き、浮気は“さておいて”、妻を責めたりするし、出世のためには、恋人をないがしろにして、それは当然だ・・みたいな考え方を押し通し、自分から終わらせようとしているのに、「俺の気持ちがわからないのか」みたいなことを言うヤツもいます。
男も見くびられたものだ、と思いましたが、でもよくよく考えてみると、そういうものかもしれない・・世の中の男、と思い直しました。
あとがきで唯川さん自身が書いていますが、
女はいつも寂しがって生きている
男はいつも悔しがって生きている
このふたつの言葉はなんだか重い・・。
私にも思い当たるふしが・・、いや“ふし”だらけだ…σ(^_^;)
この短編集では、そんな女の思いが、ホラーともいえるくらいの怖ろしさで、結末に現われるものもあって、ネタばれするといけないので書きませんが、男の私としては心臓にぶすりというくらいのインパクトを受けました。
300頁近くありましたが、いい女といい思いをしている男や、しっぺ返しをくう男、じわじわと攻められる男、二人の女の言い分に右往左往する男など、まるで自分のことのように戸惑っている間に読了(^_^;)
これは読物としても、男女の機微を感じるにもよく出来た本でした。
男女間の“ワケあり”にちょっと苦しんだことのあるあなたにおすすめですd(^_^o)
【Now Playing】 いらち俥 / 桂南天 ( 落語 )
« 【はっPのアナログ探訪_0129: Abbey Road / The Beatles ( LP )】 | トップページ | 映画「ミス・シェパードをお手本に」を見てきました »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「恋愛」カテゴリの記事
- 「抱擁/北方謙三」を読みました。(2023.10.13)
- 嵐山光三郎さんの「文人悪妻」を読みました。(2023.09.26)
- 吉行淳之介と開高健の対談形式本「街に顔があった頃」を読みました。(2023.09.05)
- 映画「青いカフタンの仕立て屋」を見ました。(2023.06.20)
- 「アガワ流 生きるピント」を読みました。(2023.06.18)
« 【はっPのアナログ探訪_0129: Abbey Road / The Beatles ( LP )】 | トップページ | 映画「ミス・シェパードをお手本に」を見てきました »
コメント