「双頭の鷲」轟悠・実咲凜音、迫真の演技見てきました
宝塚歌劇宙組・神奈川芸術劇場公演『双頭の鷲(ミュージカル) 原作:ジャン・コクトー、脚本・演出:植田景子』を見てまいりましたのでその感想を。
今回は、専科の轟悠(とどろき・ゆう)さんと、宙組トップ娘役で、次回本公演での退団を発表している実咲凜音(みさき・りおん)さんが二人で真っ向から取り組んだ作品とお見受けしました。
脚本の植田景子先生は、海外の戯曲に取り組んでいる轟さんを見て“今ならイケる”と踏んだのでしょう、このコクトーの作品に真っ正面から正攻法でぶつかっていったのだなと思いました。
前半では、マジに轟さんと実咲さんが“ガチ”で芝居に入り込み、誰も出る幕がないような互いの実力を見せつけるような展開でした。
ストーリーテラーの和希そら(かずき・そら)さん、その他主要メンバーで警察長官役で伯爵役の愛月ひかる(あいづき・ひかる)さん、王妃の侍女役の美風舞良(みかぜ・まいら)さん、亡き国王の旧友役の桜木みなと(さくらぎ・みなと)さん、王妃に仕える少年役の穂稀せり(ほまれ・せり)さんも舞台上にはいましたが、ほとんど轟、実咲の二人芝居となっていました。
ここまで見て、これを本当に宝塚でやるべきものなのか、という疑問は一時間ちょっとの間ずっと頭の中をよぎっていました。
一幕終了後に、隣に座っていたカップルが「いいねぇ、やるじゃない、なかなかいい」と思わず口にしていましたが、通常の芝居を見に行ったとしたらそういう感想になるな、とは思ったけれど、私としてはやはり「ほとんどのメンバーはいらない感じになっているし、組としても力を発揮できず、不完全燃焼してるんじゃないのかな」と老婆心ながら思ったりもしたのでした。
まるで室内劇、二人芝居でしたから・・。
二幕に入ると、他のメンバーの“からみ”も出て来て、俄然面白くなり、和希さん、愛月さん、美風さん、桜木さんらが生き生きと機能し始めます。
ストーリー展開的にも劇的になってきて、ラスト近辺の実咲さんの迫真の演技、轟さんの宝塚男役の領域をはるかに超えたような芝居の何たるかを見せてくれるような演技は普段宝塚では見ることのない世界でした。
あえてこの領域まで宝塚が踏み込んだのか、と思いましたし、植田先生が純粋にコクトーの原作を研ぎ澄まされたものにまで磨き上げたのがこれなのだと声も出なくなりました。
でも、これを宝塚で、しかも組子を何人も連れてきてやるべきものなのかは、私にはわかりません・・と最後まで感じていました。
難しいなぁ。
ただ、実咲さんはこの役にかなり突っ込んだところまで自分を追い詰めているのがよくわかり、実力を存分に発揮し、今までにないものも手に入れたように思いました。
つまり、退団後、外部の舞台に立ったときには、かなりの実力者になるであろうという予感がいたしました。
今思っていることは、「いい芝居」だった。宝塚としてはどう評価したらいいかわからないが・・。
でも、記憶に残る“とんがった”作品になった、轟さんにとっても、実咲さんにとっても・・、というところです。
最後に和希そらさん、客席でのアドリブも効かせて、たいした度胸と、演技力、歌唱だと思いました。
【Now Playing】 Raincheck / Trio65 ( Jazz )
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