花組「雪華抄/金色の砂漠」見納め
宝塚歌劇・花組東京公演「雪華抄(宝塚舞踊詩)/金色の砂漠(トラジェディ・アラベスク)」見納めしてまいりました。
今回の公演は、“和もの”のショー「雪華抄」の後、舞台がいきなり砂漠になるというミュージカル「金色の砂漠」の二本立てでしたが、私の長い宝塚観劇経験の中でも心に残る公演となりました。
まずショーの「雪華抄」。
驚いたことに初っ端の「ちょんぱ」が照明のアクシデントにより出来ず(薄明かりが点いて花組の面々が見えてしまっていた)、いったん組子たちは銀橋、舞台から退けて5分間の“中断”というか、最初っから止まってしまったので、まだ始まっていない状態の中、場内アナウンスがあり、客席はそのまま待機・・。
5分後に再度やり直して最初から、という非常に珍しいハプニングから始まりました。
でも、そのあとはこのショーの素晴らしさはもちろん変わらず、プロローグの彩り鮮やかな様子、素晴らしい衣装と、音楽ではリズムが洋風なのにとてもマッチしている、明日海りお(あすみ・りお)さんと柚香光(ゆずか・れい)さんの「鷹と鷲」のシーンもますます磨きがかかり、芹香斗亜(せりか・とあ)さんと仙名彩世(せんな・あやせ)さんの「七夕幻想」は美しく、明日海りお、花乃まりあ(かの・まりあ)トップコンビの「清姫綺譚」の幽玄で妖しげな場面も相変わらずの良さを感じました。
最後に専科の松本悠里(まつもと・ゆり)先生も銀橋に入ってくるフィナーレ含め、抜群のショーでした。観客席の様子も身を乗り出して見ている様子を感じました。
そしてお芝居の方、「金色の砂漠」。
こちらも近年にない傑作だと思いますが、東京公演も日にちが経つに連れ、登場人物それぞれのキャラクターがより際だっていたと思いました。
例えば柚香さんのテオドロスは、単純に演じてしまうと“実利を取る計算高いイヤなやつ”程度の人物像になってしまいそうですが、彼の心の中には何があるのか・・というところまで考えて演じている、ということがわかるものでした。
明日海、花乃の主演コンビの心模様がこの物語の一番の中心で、複雑かつ直情的、そして人間の持つ影の部分までもが描き出されなければならない・・という、難役でしたが、こちらもより“深い”表現の領域まで到達していたと思いました。
だから見ているこちらも胸が苦しくなるような、そんな気持ちになるのでした。
私の周囲には初見の方も多かったようですが、あまりの急展開、心の葛藤、人の残忍さ、ずるさ、などが次々とストーリーとして展開されていく様に大きく心を動揺させているように見えました。それほどこの物語は深く、魅力あるものなのだと思いました。
何度見ても、その時々で、見る方の感情も異なってくるし、演じている方もおそらく毎舞台新たな感覚をもって舞台に立たれているのではないかと思いました。
明日海さんはトップとして充実期に入り、花乃さんは退団されるのですが、ここでまた大きく成長されたと思います。今後どうされるのか存知上げないのですが、もしミュージカルの舞台などに立たれるのであれば、もともと歌唱力もある花乃さん、きっといいミュージカル女優になられるのではないでしょうか。
というわけで、見納めとなった今回の花組東京公演、いつまでも心に残るであろう“名公演”でした。
【Now Playing】 大人のジャズタイム / 島崎保彦他 ( ラジオ日本 )
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