「ひかりの魔女」を読んだ
『ひかりの魔女/山本甲士著(双葉文庫)』を読みました。
山本さんの作品は、読む度に心の中にほのかな火が灯る感覚をおぼえます。
人の心を信用しない、無視する、自分だけよければいいのだ・・そんな人ばかりの世の中で、山本さんの書く物語は自分が小さかった頃にいた周囲の人たち、町の人たちの様子を彷彿とさせてくれます。
今回はおばあちゃんとその孫が主人公ですが、おばあちゃんと一緒に暮らしていた長男が事故で亡くなり、次男家族宅に身を寄せ、父母・長男・長女の家族の中におばあちゃんが入ってきます。
遠慮がちに見えたおばあちゃんですが、浪人中の孫と、かつて書道を教えていたことのある生徒であった人たちのところに挨拶に回ります。
そこで孫の男性は、おばあちゃんのなんでもないような心遣いがかつての生徒達の心をつかみ、やがてその周囲の状況をどんどん良くしていく様子に気づきます。
そして、おばあちゃんが来るまでは最悪の状態だった四人家族がおばあちゃんのさりげない“魔法”によって家族の繋がりを取り戻し、輝きはじめるのでした。
おばあちゃんがつくるごく普通の和食は、家族やおばあちゃんのかつての生徒達(おばあちゃん信者?)を幸せにしていきます。
山本さんのお話に必ずといっていいほど登場する心を込めてつくった食事は、“心の繋がり”のキーワードなんだな、と思いました。
いつも私を夢中にさせ、幸せにしてくれる山本さんの作品。
今回も幸せ気分で読めました。
途中で何度も泣いてしまいました。人が人を思い、家族同士が何かのきっかけでより深い思いを共有する、・・ささいなことですが、今の世の中ですっかり遠ざかり、忘れかけている気持ちを呼び覚ましてくれるのです。
以前、山本さんの作品「わらの人」の読後感を書いたときだったか、著者の山本甲士さんご本人からこのブログにコメントをいただいたことがありました。
とてもうれしかったし、山本さんご自身のあたたかさも感じました。
また山本さんの作品を読んだら感想を書きますねd(^_^o)
【Now Playing】 She's Leaving Home / The Beatles ( Rock )
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