ついに星組・スカーレット ピンパーネルを見た
宝塚歌劇・星組東京公演「スカーレット・ピンパーネル(ミュージカル)」をご厚意で見ることが出来ましたので感想を。
この公演はトップスター紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん、娘役トップの綺咲愛里(きさき・あいり)さんの新トップコンビ、東京での本公演お披露目です。まったく予想がつかない紅さんのトップ、期待と不安とが入り混じり、ドキドキしながら見に行きました。
過去にこのスカーレット・ピンパーネルは、同じ星組で安蘭けい(あらん・けい)さん主演、そして月組で霧矢大夢(きりや・ひろむ)さん主演で行われていて、いずれも大人気でした。
安蘭さんは、艱難辛苦を全身で受けとめ、革命政府との闘いや、妻マルグリットとの荒涼とした関係の中、信ずるところを突き進むパーシーを演じ、霧矢さんは革命政府からフランス貴族を亡命させ、妻との関係にも心底悩みながらもその“人間力”で心の底にある温かさを保ちながら活躍するパーシーを演じ、両者とも甲乙付けがたい好演でした。
そして紅さん。
今までのパーシーは、敵に察知されぬようにわざと“変な人”“おかしな人”を演じ、スカーレット・ピンパーネルに変身したときの凜々しさ、格好良さがそこで鮮やかなコントラストを見せたのですが、でも紅さんはいわずと知れたコメディエンヌ。
パーシーはますます“おかしな”感じが強調され、客席は爆笑、客席に市川染五郎さんがいるのを見て、舞台から“捌ける”ときに“六方”を踏んだり(*^_^*)、もう紅さんらしいのです。
だから、スカーレット・ピンパーネルになり、妻のマルグリットと心通じたときにも、今までは男らしく、それまでのちょっと変なパーシーからキリッとしてそこが格好良かったのですが、でも、おかしなパーシーも残しつつの表現になっていて、・・私はそこがいいと思ったんです。紅さんらしいよ。人間味があり、ユーモアもあふれ、やさしい男パーシー、いいじゃないですか。
そして、紅さんは全身全霊をもってスカーレット・ピンパーネルになっていました。
こんな全力のトップスターを見たのは長いこと宝塚を見てきましたが、初めてです。
紅さんが持っているものを躊躇せず、出し切って、そこに苦労の末その座についた星組トップスターがいました。こんなに新鮮な気持ちで心の中で後押ししながら観劇したのも初めてです。
相手娘役、綺咲愛里さんもそれまでの「キャチ・ミー・・」や、「オーム・シャンティ・オーム」でも予想以上の素晴らしさを発揮していましたが、今回も今までの遠野あすか(とおの・あすか)さんや、蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さんとはひと味かわったマルグリットを演じていました。トップお披露目とは思えぬ堂々としたものです。
そしてこの演目で一番“おいしい”役どころ、ショーヴランを演じた礼真琴(れい・まこと)さん。完全二番手ですよね、演技も厚みが出て来たし、歌唱は今までで一番と言えるくらい、歌い上げ方も素晴らしかった。
ミュージカルとしての部分が終え、幕が降り、その後のショーで一人、礼さんが「ひとかけらの勇気」を銀橋で歌い出したときに今の星組の様子が全体的にわぁっとオーバーラップしてきて、こらえていた私の涙のダムが崩壊・・・。
嗚咽しそうになるのをこらえながら「よかったよ、よかったよ」と何度も心の中で繰り返しながら見守りました。
こういう群衆のシーンが多い演目では、星組は本来の力を発揮します。
七海ひろき(ななみ・ひろき)さんはロベスピエールを演じ、従来のこの演目での配役よりもいい場面をもらっていましたが、今までとちがう星組の様子にちょっと圧倒されていたような気もしました。次回からは大丈夫でしょう。
それからルイ十六世の遺児「ルイ・シャルル」を演じた星蘭ひとみ(せいらん・ひとみ)さん、セリフ回しもいいし、舞台に立つ姿が非常に爽やかで、凜としたものがありました。これからきっといい役者になられるんじゃないでしょうか。
今回、紅さんの新トップスターの舞台での様子を中心に書きましたので、星組個々の方々にはふれませんでしたが、星組、かなりいいですよ。
紅さん、綺咲さん、新しい星組、ぐんぐん引っ張っていってください。
期待しています。
【Now Playing】 Migratory Birds / Takahiro Kido ( Healing Music )
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