映画「愛を綴る女」を見ました
映画『愛を綴る女(MAL DE PIERRES)/2016年・仏 監督・脚本:ニコール・ガルシア 出演:マリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、アレックス・ブレンデミュール』を見ました。
2006年に出版されたイタリア人作家、ミレーネ・アグスのベストセラー小説「祖母の手帖」を元に、時代設定を1950年代のフランス南部にしたものだそうです。
監督は原作と異なり、祖母の手帖を読んだ孫ではなく、その祖母自体の話をピックアップしてそのまま主役のマリオン・コティヤールにやらせています。
17年にも及ぶひとりの女性の“自由への希求と理想の愛のゆくえを、ストイックかつ官能的に見つめた問題作”と言われたものなんだそうですが、主人公のガブリエル(マリオン・コティヤール)は、自由や愛に対する突き詰め方があまりにも過激で一直線でした・・あきれるくらい。
ガブリエルの母親はそんな自分の娘をもてあまし、ジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)と無理矢理結婚させ、見合いのようなものをした際にも「愛してないわ、絶対に愛さない」「俺も愛していない」という会話をする二人・・それが結婚してしまい、その後病気になったガブリエルは療養施設でアンドレ・ソヴァージュ(ルイ・ガレル)に出会い、狂おしいまでの愛を感じ、そこからは見ているこちらが想像もしなかった展開になります。
ネタばれしてしまうので、その後の奇想天外な十数年間のガブリエルの手紙に愛を綴り続ける狂乱といってもいい姿や、ただひたすら耐え続けるように見える夫ジョゼ二人の顛末について書くことができませんが、いやもう狂おしいまでの愛に魂をささげるガブリエルの存在はあまりにも衝撃的で、今まで見た数々の映画の中でも一・二を争うようなものでした。
そして二人が住むこととなった美しい海辺の風景がよりいっそう厳しくも哀しい、そして漂うような人間の悲哀をよりいっそう際立たせていました。
人が互いの配偶者に出会い、子を持ち、ただ生きて行くことがこんなにも数奇で厭世的なものなのか・・などとも思ってしまいますが、あっと思う間もないラストシーンに一筋の光明が見えました。
終盤の「えぇっ、そういうことだったの!」という回想シーンは見ている者を混乱と納得の気持ちにさせてくれますが、ここが1番の見どころなのでぜひ映画館でそれを味わっていただきたい。
私の“印象に残る映画”の十指に入る傑作でした。
【Now Playing】 ラジオ深夜便 / 後藤繁栄 ( NHK-AM )
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