「ちろりん村顛末記」を読んだ
『ちろりん村顛末記/広岡敬一著(ちくま文庫)』という本を読みました。
夏に鎌倉に出掛けたときに鎌倉駅近くの独特の品揃えの本屋さんで買い求めました。
そこでは、すでにこのブログでご紹介済みの「女の足指と電話機/虫明亜呂無著」も併せて買い求めました。
この二冊だけでも“ム・ム・ム”っていう感じです。
「ちろりん村」というのは、1970年代に琵琶湖畔の田園地帯に突如出現したソープランド街です。
当時はソープ・・とは呼ばず、別の名前で呼ばれていました。
突如出現した通称“ちろりん村”は世間の耳目を集めたそうです。
なにせ、なんにもない田んぼだらけの中に突然異様な建築物と共に一大歓楽街が出現し、その行く末がどうなるのか・・うまくいくのか、すぐに消滅してしまうのか、吉原や千葉の同業歓楽街も注目していたことが、この広岡さんのルポを読んでよく伝わってきました。
ルポの中心は、当時トルコ嬢と呼ばれたちろりん村の従業員?!と、それを経営したり、お店の従業員となっていた男性の「なぜこの仕事を選んだのか?」という根源的なところから入り、読んでいるだけで滅入ってしまいそうな困難ばかりの生き方、そしてそれらをどう切り抜けて、あるいは泥沼から這い出るようにこの業界にたどり着いたのか、というものでした。
特に女性従業員は、家族との関係が悲惨だったり、男に騙されたり、貢いだり、ちろりん村で大金を稼ぐようになってからは想像を絶する湯水のような金の使い方、そしてせっかく大金を稼げるようになったところで、いわゆる“ヒモ”が現われ、稼ぎのほとんどをこの何もしない男に使われてしまう・・読んでいるだけで、人生の悲哀、無常を感じ、人生というものの陰を大きく意識したのでした。
経営する側は官憲に脅え、全盛期には信じられないような儲け方をしているにもかかわらず、いつ警察に挙げられるのか、いつ廃れてしまうのかに気を揉み、やはり常人には考えられない明日をも知れない世界に生きている姿が印象的でした。
この業界はやがて、どんどん下火になっていくわけですが、最初の一店から隆盛を極める様子、そして衰退していくところが『風俗ルポの最高傑作』と言われるこの本には著者広岡氏の思い入れが入り混じりつつ描かれています。
日本のひとつの時代、風俗を見事に切り取ったルポだと思いました。
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