「コーヒーに憑かれた男たち」を読んだ
『コーヒーに憑かれた男たち/嶋中労著(中公文庫)』を読みました。
この本は、コーヒー屋の御三家と呼ばれた名人についてのお話が中心になっています。
関口一郎(銀座「カフェ・ド・ランブル」)、田口護(南千住「カフェ・バッハ」)、標交紀・しめぎゆきとし(吉祥寺「もか」)の三人です。
とにかく、それぞれがそれぞれにコーヒーに“取り憑かれた”というくらいの人生を歩んでいたことが綿々と書かれています。
日本でコーヒーが飲まれることになった黎明期から、単に焙煎されたものを買い、コーヒーを淹れていたコーヒー屋主流の時代。
さらに「焙煎」を自らやってコーヒーを淹れることによる“味の追求”をするコーヒー店が台頭してくる時代の話。
その焙煎の奥深さや、抽出の方法についても名人三人三様、また、名人を取り巻く人達が見た名人達の人間的な魅力についても書かれていて、引き込まれます。
私もたまたま昨年から何十年ぶりに豆を挽いてコーヒーを淹れ、家族と共に楽しむようになりました。これは長男が父の日にミルと豆を買ってきてくれてからです。
そしてまた、たまたま職場の人から紹介された自家焙煎をやっているコーヒー店を紹介され、そこで美味しいコーヒーを味わい、さらにコーヒーに対する興味がわいてきました。
それまでコーヒーに対しては雰囲気のよい店であれば、味わいそのものは“そこそこ”でいい、みたいなところがあったのですが、今やそんなわけにはいかなくなってきました。
ましてや、この本を読んでしまったからには。
でも、この本に出てくる名人のような人生そのものを懸けてコーヒーを淹れるという世界は、まだまだまったく理解が及ばないところです。
今の段階で私が思うのは、コーヒーの味わいを追求しているマスターがいて、そのお店に独特の雰囲気というか、惹きつけるような魅力があり、そこに集まってくる人達から自然に心地良い空間が生み出される・・そんな中で味わうコーヒーが美味しいのでは、というところでしょうか。
だから、千葉市の中央区、大巌寺にある「じゃくう鳥」というコーヒー店は今、コーヒーと共に何かを感じ、期待し、居心地よく過ごせる場所となっているのです。
コーヒーには、そういう世界があるんですよねぇ。
【Now Playing】 ラジオ深夜便 / 柴田祐規子 ( NHK-AM )
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