「国家の罠」佐藤優氏の本を読んだ
『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて/佐藤優著(新潮文庫)』を読みました。
ブックオフで108円にて手に入れました。
この平成19年発行の本、550頁にわたる長編でしたが、どんどん読み進み、数日で読了。
ノンキャリアの外交官としてやってきた佐藤氏の外交手法と、時代の潮目に国が取った国策捜査(鈴木宗男氏の外交手法を葬り去り、新しい時代への区切りを付けようとした)の渦中に巻き込まれていった氏の運命と、それに立ち向かう意志力に圧倒され大長編なのに短時間で読み切ってしまいました。
そもそも、国策捜査という言葉自体がどういうものかも具体的には把握しておりませんでしたが、ようするに、国民がワイドショー的にやり玉にあげるようなことについて、“ガス抜き”的に無理やり犯罪を作り出し、その犯罪のジグソーパズルの最後に空いた穴=犯罪者をはめ込んでいくというものです。
その犯罪者のピースにはめ込まれたのが、著者の佐藤優氏でした。
私も当時のニュース報道を見ていましたが、それはもう鈴木宗男氏と佐藤優氏はひどい言われ方をしていました。
佐藤氏はその騒がしい報道がなされている時には拘留中でしたが、この本を読むと、外部からの情報をあえて入れないようにしていました。
情報を入れなければ、それによって余計なことを考えてしまい、誤解されるような調書を取られることはないとの考えだったのでしょうが、その意志力にも驚きました。
また、この本の半分以上を占める検察官との取り調べ中のやり取りは克明で、息詰まる取調室の様子が再現され、一番の読みどころになっています。
そして、拘留されている人がどんな環境にあるのかも、人情味を感じさせつつ記されていて、それがまた一人の人間としての心模様として読んでいるこちらにもひしひしと伝わってきたのでした。
外交上の機密事項ということもあり、この本に書き切れていない部分もあるのですが、それでも佐藤氏が外交官時代にやってきた、それこそ命懸けの仕事についても書かれていて、ロシア外交の奥深く、難しい様子がよくわかりました。
そして、そんなことでもしなければ、北方四島の問題は解決しないのだ、ということもあらためて考えることになりました。
550頁の重厚な著書ですが、文体はスタスタと歩くように軽快で、読み応えがある素晴らしいものでした。
外交に興味のある方、検察とはどういうものか、国策捜査ってどういうもの、外務省の内実は・・など、そんなことにふれてみたい方には読んでみることをおすすめしたい本でした。
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