山本夏彦翁の「完本 文語文」を読みました。
あけましておめでとうございます。
今年は読書で始まりました。というか、実は大晦日に読み終えた本です。
年末にふさわしく?けちって108円でブックオフにて手に入れた文庫本『完本 文語文/山本夏彦著(文春文庫)』でした。
感想は新年になってしまいましたが、心のみならず、全身に染み渡るような本でした。
著者は大正生まれの昭和育ちであるが、文語文を国語の遺産、柱石だと思っていて、明治以来欧米の文物が入ってこのかたそれまで淀んでいた文語文がにわかに活気を呈した、そしてそれを捨て去ってしまったことを嘆いていますが、そもそも大正生まれの著者にしてからがそんなことを知りうる時代に生まれていない。
でも、幼い頃に父が遺してくれた様々な書物を勝手に紐解き、その時代の空気を知り、時代の様子を知り、その時代の文章に馴染んでいたので、その時代の人物とは旧知の仲のように文筆を通して知古の存在となっているのです。
例として適切かどうかわからないが、私が現役時代のビートルズをほとんど知らずに過し、解散後にその全ての遺産を聞きまくり、まるで旧知の人のように感じていることと、やや似ているのかもしれません。
樋口一葉、二葉亭四迷、中江兆民などは筆者には既知・旧知の人となっています。
佐藤春夫、中島敦ら諸家の名文を引き、失った父祖の語彙を枚挙し、現代口語文の欠点を衝く、そんな本で、私も知らぬことばかりの恥をここで素直に白状しますが、読めば読むほど納得させてくれる本でした。
また、著者が世間に通用してしまって残念に思っている言葉が挙げられていました。
「生きざま」・・死にざまはあるが、生きざまはない・・と言っています。私もまだそっちのくちです。
「告白」と言って白状と言わない・・とも言っています。告白だって、・・イヤな言葉だねぇ・・と、私もまだ思う者の一人です。
「奇しくも」は、目で覚えるから<きしくも>になってしまう、『くしもくも』だろう、と言っていますが、もう間に合わない。
「床の間」を「ゆかのま」と読むがごとしです。
などと、くどくど書いてしまいましたが、少ししゃっきりして新年を迎えることになりました。この本のおかげで!
今年も自分らしく、長いものには巻かれず、札束には切られず、皮肉な返答のひとつもしながら生きて行こうと思います。
それじゃ今年もよろしく。
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