「やりがいのある仕事」という幻想・・という本。
『「やりがいのある仕事」という幻想/森博嗣著(朝日新書)』という・・本を読みました。
タイトル、本文にも「・・」が多いのは、やはりショッキングというか、自分の今まで考えていたような基本的なものの考え方が崩壊していくというか、ささやかな価値感、“粉々”って感じですよ。
著者・森博嗣さんについては、ついこのあいだ「月夜のサラサーテ」という本を、このブログでご紹介いたしましたが、今回もキツい一発・・二発・・いやもっとたくさんの“キツい”お言葉を頂戴した感じです。
まずは仕事というものがどういうものか、という定義を著者の考えに基づいてきっちりと明確に書いています。
詳しくはこの本を読んで、ということなんだけど、つまり仕事というものは、自分の人生そのものだ、とか、仕事にこそその人の価値・評価がはかられる要素があるのだ、とか、仕事がうまくいかない、仕事上の人間関係がやはりうまくいかない、などなど、私達が日常感じている、考えているようなこと自体がほぼ否定されています。
そんなことはたいしたことではない、というわけですよ。
だから、後半に著者が大学に勤めていたときに学生や卒業生から受けた相談に対する回答コーナーのようなものがあるのですが、“にべもない”速攻の回答に、著者も言っているが、励ましてもらおうと思って相談している学生や卒業生は、たぶん“ギャフン”となっていることと存じます (・_・;
たとえば、「休日も、仕事の心配事で心が支配され、気が休まりません。毎日仕事から帰宅しても、疲れ果ててなにもする気が起きません。せめて休みを休みたらしめるためにはどうしたらよいのでしょう?」
という相談に対し
「やりたいことを見つけることだと思う。」とまずストレートパンチ。
疲れ果てている以前に、家に楽しみがないことの方が問題ではないだろうか、と続き、そのあとはこの本を読んでください。
言われてみればまったくそのとおり、という気持ちになってしまいました。
人生に苦しむ人のパターンとして、仕事がうまくいかなくなったわけでもない、ローンはあるけど、お金に困っていない、ただ会社、家族、子供、ローン、両親、いろいろなものに少しずつ縛られて身動きできなくなっていた。
気づいたら、自分の自由なんてどこにもなくなっていた。ただただ働いて、毎日が過ぎて、酒を飲んで、疲れて眠るだけ、その連続に堪えられなくなる・・どこで間違えたんだろう・・そういうパターンだ、と書いています。
子供の写真を見せたり、仕事の話をしたり、買おうとしているマンションや、旅行に行ったときの話とか、そういうことを自分から言いたがる人は、楽しく生きていない人だとも・・。
なんか思い当たる人いっぱいいる。
本当に楽しいものは、人に話す必要なんてないのだ。とも、おっしゃっています。
なるほどね。
最も大事なことは、人知れず、こっそりと自分で始めることである。
人に自慢できたり、周りから褒められたりするものではない。自分のためにするものなのだから。・・と。
う~ん、最近、私もこの境地に少しばかり近づいているような気がしないでもない(^^;)
みんなが得意げに言っていることには、ほとんど興味がないんだよね。
これでいいんだね。
と、やや無理やり悟り気味になったところで、本日の読書感想、おしまいっ!!
【Now Playing】 There is No Greater Love ~ Go-Go / Miles Davis ( Jazz )
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