「あしたのこころだ -小沢昭一的風景を巡る-」を読んだ
『あしたのこころだ -小沢昭一的風景を巡る-/三田完著(文春文庫)』を読みました。
小沢昭一さんが亡くなって、もう6年も経ったのか、とあらためて思いました。
著者は、小沢さんがTBSラジオでやっていた「小沢昭一の小沢昭一的こころ」を学生時代に聞き、すっかり小沢さんの虜のようになってしまい、やがてはその番組の台本を書くまでになった方。
私もその番組は何年経っても、大人になっても、オヤジになっても聞いておりました。とにかくおもしろいっ!
著書三田完さんは、私のこれまた大好きで、衝撃的とも言えるような内容のNHKアナウンサーでありながら、業が深く、激情に身をまかせてしまい、地方局を流転し、ついに安住の地も見失った伝説の名調子アナウンサー中西龍を描いた「当マイクロフォン」も書いていることを知り、再び驚き、共感を持ちました。
小沢さんの葬儀の手伝いをお願いされ、式場の受付テントで小沢さんを思い起こすところからこの本は始まるのですが、生前の小沢さんを若い頃から晩年まで関わった人たち、そして小沢さんが訪ねていた場所も、辿り、小沢さんの少年時代から、映画に出まくっていた時代、奥さんと知り合った頃の話、そしてあの名物番組製作の様子まで、とにかく興味の尽きない内容でした。
小沢さんは、自分を“シロウト”だからなどと言いつつ、実は“プロ中のプロ”であり、さらにどんな人にも出来ないあの厳しくて優しい感じでの人との接し方、すべてが私にとっての魅力でした。
その魅力を余すところなく(いやいや、語り尽くせないものがあるけれど)、伝えてくれるのがこの本でした。
つまり小沢さんの“人間”そのものに惹かれている人にとっては応えられない本です。
著者の小沢さんへの想いは果てしない感じ・・。
読んでいて、著者が涙をにじませるところでは私も泣いてしまいました。
いい本でした。小沢さんのあの独特な語り口、叶わないけれど、またリアルタイムで聞きたいと思いました。
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