「太宰治/井伏鱒二著」を読んだ。
『太宰治/井伏鱒二著(中公文庫)』という本を読みました。
これは、太宰から「会ってくれなければ自殺する」という手紙を受け取ってから、井伏鱒二が師として、そして友として親しくつきあってきた二十年ちかくにわわたる交遊の想い出を綴ったものです。
また、太宰の作品解説も精選して集めたものを収録。
書かれている二人の交遊の様子を読んでいると、太宰の奔放というか、自分勝手というか、井伏に甘えているというか、からかっているんじゃないか?という部分も含めて、得てして男と男がつきあいだすとこんなことになってしまうんだろうな、という展開が事細かに書かれていました。
もし私が、井伏であったら、そして井伏の奥さんであったらと考えると、ぜったいに太宰に愛想を尽かしていたと思いますが、井伏は太宰の葬儀のときに、自分の子供が死んでも泣かなかったのに、声を上げて泣いていたと河盛好蔵氏が書いていたことも記されています。
井伏の太宰を思う気持ちは、ちょっと私のような凡人には届き得ないところにあるのだと思いました。
太宰の生活ぶりは、女性関係も含め、凡人には理解できないものがありました。ちょっと“ええかっこしい”なところもあるし、悪戯なところもある。
それでもって、人にはとことん甘えるというか、金銭的な援助についても感謝の気持ちなどを見せることもなく、してもらいたいことは徹底的にしてもらって平気な印象です。
堅気な人間には理解できない世界が描かれていて、でもそれが何故か凡人には引きつけられるものがあるのです。
それに、今じゃあこんな生き方をしていると、世間から見放されるようなことばかりなのですが、でもそれが読んでいると面白いのです。
自分の友達だったら、こっちがおかしくなってしまいそうな不思議な行動と、二人の奇異な関係。
読んでみるといいですよ。太宰が亡くなったときのことも、今まで私が知らなかったことが書かれていました。
これを読んでから太宰作品を読むと、また別の読み方ができるかもしれない。
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