「森崎書店の日々/八木沢里志」を読んだ。
『森崎書店の日々/八木沢里志著(小学館文庫)』を読みました。
実に読みやすくて、なんだかちょっと元気の出る本だった。
冒頭、主人公の貴子という女性は交際一年の彼氏から突然「他の女性と結婚するから」と別れを告げられます。
あっという間に奈落の底に落ち、失意のどん底の中、職場恋愛(もて遊ばれただけ?)だったため、会社まで辞めてしまう。
そんなところから物語は始まりました。
そこへ小さい頃に可愛がってくれた叔父から声がかかり、叔父が後を継いだ神保町の古書店に住み込みで働くことになります。
この物語の主人公は、その貴子と、声をかけてくれた叔父(昔はぶっ飛んだ感じで、貴子にはとても古書店の店主を継ぐようなタイプには見えなかった)の二人になっていて、貴子の古書店で、そして近くの喫茶店で知り合った人達との人間的なやり取りと、自身の立ち直り、さらに謎の過去を持つ叔父と、行方不明になっていた叔父の奥さんも物語にからみ始めます。
このお話の良いところは、どろどろとした不可解な、あるいは怪しいような人が登場しないことです。
それぞれに問題を抱えつつも自分に真っ直ぐに生きて行く人ばかり。
小説という形態をとっている物語としては異例に一途で真っ直ぐで、爽やかなストーリー展開なのでした。
ある日ひょっこり何年ぶりかで戻って来た叔父の妻も、色々な過去と事情を持ち、その中身はとても重いものがあるのですが、それでも主人公の貴子は真っ正面から叔母と向き合い、叔父と叔母の関係にも光明が見えてきます。
読んでいてとても勇気づけられる物語でした。
ものすごく明快な解決みたいなことにはならないのだけれど、でも、なんだか気持ちはすっきりするのです。
病み上がり、退院後、家で療養している身には、心に青空が広がるような本でした。
ありがとう。
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