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2019/07/22

幸田真音さんの「ナナフシ」を読んだ。

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『ナナフシ/幸田真音著(文春文庫)』を読みました。

ニューヨークに本社を持つ金融関係の会社でファンドマネージャーだった主人公は、世界的な金融危機で全てを失い、しかも仕事にかまけて家庭を振り返らなかった間に子供は大きな病で亡くなってしまい、その子を見守り、亡くしたあとも精神的に立ち直れない妻に見捨てられ、何もかも全てを無くして、ひとりぼろアパートに住み、コンビニの深夜勤務で生きて行くだけの収入の中、どん底に落ちていた。

コンビニの外便所の中に倒れていたやせ衰えていた女性を仕事中に見つけ、警察や救急車を呼ぶことにおびえるその女性を家に連れ帰るところから話は急に展開が変わります。

連れ帰った女性を風呂に入れ、食べ物を与え、少しずつ回復してきた。発見したときには、あまりにやせ衰えていた姿を見て虫の「ナナフシ」を見たような感覚を持った主人公だが、謎の若い女性を結局そのままアパートに住まわせ、なぜか互いに少しずつ心通わせ始めます。

女性が大きな病気を抱えていたことをやがて知り、多額の医療費がかかることもわかった上で、赤の他人である娘を自分の娘として治療することを決意。
どん底にいた主人公は元の金融関係の仕事に就き、その後互いに過去を語ることにもなり、二人の夢を実現しようと力を尽くし、娘は絶望的なほどの病状の中で必死に闘います。

子供、妻への罪悪感、さらに最初の会社で自殺してしまった部下への謝罪をその家族にしようとして断られ続ける主人公の状況と、父に死なれ、母に捨てられた若い女性の互いに気遣いながら心寄せる姿には心打たれるのでした。

娘の病状が一喜一憂するような状況での二人の気持ち、新しい職場でもまた前回のように大変な状況になってしまう主人公。
山あり谷ありのストーリーには、読んでいるこちらも心が揺れました。

でも、二人は過去の反省というか、今の時点での自分への決着をつけて納得ある生き方をしようという姿を見せます。

あのリーマン・ショック時の社会状況や、その時の当事者の様子、また近年ノーベル賞などでも注目された癌への高度治療などについても盛り込まれていて、幸田さんらしい金融小説、そしてジャーナリスティックな面も見せていて読み応えがありました。

時に感情移入してつらい気持ちになったりもしましたが、いい小説だと思いました。

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