「名画は嘘をつく」を病床で読んだ
入院して最初の数日はベッドに寝たきりだったので、文庫を片手で少しずつ読んでいました。ほかにすることもなかったもので。
で、『名画は嘘をつく/木村泰司著(ビジュアルだいわ文庫)』を読んだのです。
まずは私の西洋美術における絵画というものの理解がそもそもあまり無かったことにすぐに気づきました。
14世紀に始まるルネッサンス時代には西洋美術は彫刻から絵画の時代になっていくのですが、そもそも絵画は「ある一定のメッセージ」を伝えるという目的があったということに、何となくは気づいていたのですが、それがメインの目的だとは思っていなかったこと、それが私の理解不足でした。
現代の芸術って、制作者の内面世界を表現することが当たり前だと思いますが、実は上記のようなことがあって、“伝えるべきこと”を伝えているかが当時は重要なことだったのですよね。
それを踏まえての「名画は嘘をつく」というこの本の成り立ちがあるわけです。
嘘の種類にもいろいろありました。
〇タイトルの嘘・・タイトルになっているのは後付けで、実は全く異なることを描いていた。
〇モデルの嘘・・かわいい女の子に見える絵が、実は男の子だった。
その他王室の嘘、景観の嘘、設定の嘘(史実とは異なる設定で描かれている等)、画家の嘘、見栄の嘘、見方の嘘、天界の嘘、ジャンルの嘘、などなど、もう・・嘘だらけ(^_^;)
こういうのを研究し、歴史的な背景などを探索していくと、西洋美術史を研究している人は、もう“たまらん”というくらい興味が尽きないのでしょうね。
私も読んでいて「へぇ、そうなんだ、知らなかった」ということばかりでした。
宝塚でも人気のある皇后エリザベートの肖像(フランツ・ヴィンターハルター)も、美しく描かれ過ぎているという著者の指摘がありました。
でも・・私からしたら実物の写真も残っていて、実物の方が美しく見えちゃうんですけどねぇ・・…σ(^_^;)
有名なムンクの「叫び」も、実は描かれたあの悲痛な表情をした人物が叫んでいるのではなく、耳をふさいで叫びから自分自身を守ろうとしているのだと知って驚きました。
そんな話、初めて聞いたもので。
というわけで、西洋美術に疎い私でも知っている名画の数々がどのような背景で、どのような“嘘”を含んでいるか、画と文を交互に見ながら、「あらそう!」などと言いつつ読むことが出来ました。
私のようにあまり美術に詳しくない人でも興味深く読むことができる本でした。
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