立川談志に聞く「人生、成り行き」を読んだ
『人生、成り行き -談志一代記-/立川談志・聞き手:吉川潮(新潮文庫)』を読みました。
私の体調が戻りはじめ、ベッドから降りることが許可され、トイレにも行けるようになった頃に読みました。
7年くらい前の文庫発刊で、ブックオフで見つけておいたものです。
噺家として弟子入りした(お師匠さんは、あの小さん師匠)頃から他を圧して噺がうまかったと自画自賛しているが、実際にそうだったのは事実で、寄席だけでなく、キャバレーやその他テレビなどにもどんどん進出していたらしい。
そして、その後もそうだったが、生意気であったのも間違いなかったようです。
その頃のハチャメチャぶりを読んでいるだけでも面白かった(結婚、志ん朝に真打ち昇進の先を越される、政治家になっちゃった、選挙戦のおもしろ話などなど)のですが、この聞き書きでもっとも迫力があってリアルに伝わってきたのが、あの落語協会分裂、立川流創設の話でした。
騒動のさなかで右往左往する落語家達、師匠との関係(師匠には優しい眼差しも持っているが、その器と行動には諦めも感じていた様子)、そういうことがあってからの落語そのものに対する自己にも厳しい突き詰め方には今さらながら驚きました。
性分だから仕方ないのかもしれませんが、そんなに極めようとして落語の向こう側の扉までこじ開けようとしている姿には、「そうまでせんでも」・・と私は思ったのですが、でもそれが談志の魅力であったわけで・・。
弟子の志の輔さんのことを褒め、やがては自分の今考えている領域まで来るよきっと、などと話していますが、それを聞いている志の輔さんは戸惑っています。
そこまで行っちゃうと、もうそれは落語というジャンルではなくなってしまいそうです。
あとは亡くなった志ん朝師匠へのライバル心が其処此処で見えてきます。
志ん朝師匠が何人もの先輩を差し置いて、先に真打ちになることが決まったときに「お前辞退しろ」と言いに行ったり(^_^;)、「いや、兄さん、あたしは実力でみんなを抜いたと思ってる」と言われて、ぎゃふんとなり、「うん、立派だ」と思ったり。
結局、談志さんは自分とは異なるジャンルの噺家だ、ということで無理やり自分を納得させていたのが見てとれました。
談志師匠の本は数ありますが、この本はガチンコで本人から聞き書きした芯の通ったものでした。立川談志に興味のある人にはおすすめ本です。
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