夏井いつき先生の「子規365日」を読んだ。
『子規365日/夏井いつき著(朝日文庫)』を読みました。
これはあのテレビ番組「プレバト」で芸能人などがひねる俳句に厳しくも温かい眼差しで批評を加える俳人「夏井いつき」先生が『正岡子規』の俳句を一日一句365句、すべて異なる季語で味わうという本です。
子規の俳句を、あらためて子規のものだと感じつつ味わったのは、とても新鮮な経験となりました。
夏井先生とは同郷なんですね。
テレビでもよく見られる、あの“気っぷ”のよさも感じさせる名調子も登場するし、また、苛烈な人生であった子規の病状とともに、こちらの胸もしめつけられるような句には、先生の感性あふるるような感想も書かれていました。
いわゆる研究本としてではなく、子規と同じ実作者として自由にその句を楽しむという企画だったのでこの仕事を引き受けたと書かれていました。
なので、先生、“書きたいように”書いていて、読んでいるこちらも実に一句、一句を楽しむことができました。
いくたびも雪の深さを尋ねけり
・・雪が積もったら明日は遊べるよ、とよろこぶ子供の様子かと思うと、結核性脊椎カリエスの診断を受け、痛みが激しさを増し身動きすらできなくなる子規が尋ねているのだとわかり、驚きとともに感動がしみじみと深くなります。
水入れの水をやりけり福寿草
・・福寿草の鉢、仕事机の上に置くと空気が明るくなる。子規は病床から見上げているようだが、「水入れ」は硯箱(すずりばこ)と共に枕元に置いて愛用していたもので、硯に落とす水が余れば、ちょいと福寿草にもお裾分け、という寸法です。こちらも優しい気分になれました。
子規は、34年の短い生涯で2万4千句も詠んだそうで、全て別々の季語で365句を選んだため、載せられなかった夏井先生の愛唱句も沢山あったようですが、それでも一句・一句が心に、身体に、沁みてきました。
とても心地よい本でした。
【Now Playing】 Chilly Winds Don't Blow / Nina Simone ( Jazz )
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