「昭和恋々」山本夏彦・久世輝彦共著を読んだ。
『昭和恋々 -あのころ、こんな暮らしがあった-/山本夏彦・久世輝彦共著(文春文庫)』という本を読みました。
この本は写真がふんだんです。
それも昭和10年頃から20年代~30年代~40年代と、私には懐かしい時代もあるし、時々ニュース映像などで見かけたことのあるような昭和初期のものなども。
そして、山本夏彦、久世輝彦という“一筋縄”ではいかない両人の無駄のない文章がそれら写真の時代に思いを馳せ、ただ懐かしむというではなく、現代に無くなったそれらが何を意味していたのか、世間とは、家族とはどういうものだったのか、という部分にまでふれていきます。
かつてデパートなどにあった蛇腹式の折りたたみ扉と共に二重扉となっていた「OTIS(オーチス)」のエレベーターの写真・・たしか日比谷の三信ビルが取り壊される前にあったと思う・・、もちろん“デパートガール”も映り込んでいる、どこの家でもあった縁側の人達の風景、そしてなぜか縁側に置いてあることの多かった足踏みミシン、柱時計、床屋のサインポール、原っぱで遊ぶ子ども、物干し台、などの写真と共に両人が書いた文章はなかなか読ませます。そして私には経験のないものもあるのに何故か懐かしいのです。
その時代にあって今にないものって何だろう?
と、私も思いましたが、でも具体的に言おうと思ってもうまく言えません。
人と人のつながり、みたいなものでしょうか。
それに便利になるからといって使い出した様々な家電品を筆頭とする道具などが、果たして人の生活をほんとうに豊かにしたのか、なんてことも思いました。
携帯電話、スマートフォンなどで人と人が繋がった・・?!・・めでたいようだが、ほんとうの繋がりなんて実際にはなくて、個々はとても孤独で寂しいような気もします。
そんなことにも思いが至った本でした。
最後に山本夏彦氏の本は、もう新刊書店で見かけることはほとんど無くなりました。
今の時代、まったく売れない本となったのか、それとも著作権関係などの都合なのか、または時代柄、抹殺されたのか、理由はわかりませんが、今の時代にはまったく見ることのない文体、言葉、考え方がふんだんに書かれた偏屈王の翁の本を私も何冊か保有しておりますので、大事に読み返したいと思っています。
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