「向田邦子 ベスト・エッセイ」を読みました。
『向田邦子 ベスト・エッセイ/向田邦子著・向田和子編(ちくま文庫)』を読みました。
向田邦子さんと言えば、「時間ですよ」「だいこんの花」「じゃがいも」「寺内貫太郎一家」などのテレビドラマの脚本を書いていた、という印象。
みんな昭和の普通のどこにでもいる一家で、変な人も家族にいるが、なんだか憎めない家族が描かれ、たいてい主は頑固者!・・そんな感じでしょうか。
「父の詫び状」で物書きデビューをした向田さんの文に対し、私が勝手に文章の師匠と仰いでいる山本夏彦翁が自身のエッセイの中で「向田邦子は、突然現われてほとんど名人である。」と書かれていたことも思い出します。
向田さんの文を読んでいると、次から次へと話題があふれるように流れるように展開し、淀みがありません。
しかも、どの話題も“小難しい”こともなく、すんなりと頭の中に入ってきて、こちらの想像力もフルに働くような、そんな文章です。見事としか言いようがない。
阿川佐和子さんもそうだけど、横暴で頑固で偏屈な父を描かせると天下一品です(^_^;)
ほんとうに昔はそんな父親ばかりだったのかもしれない。
そんな家庭では暴君だった父が、祖母の葬儀の時に社長が弔問に訪れ、“這いつくばる”ようにしている姿を見た向田さんの気持ちが描かれていたエッセイもあったのですが、これが実によかった。
いつも偉そうにしている父のそんな姿を見て、馬鹿にするのかと思うと、微妙な娘心がもたげ・・父のよいところを見た・・ようなことになる。絶妙でした。
向田さんの真似のできない観察力、“よけいなお世話”の正義感、食べることや、その器に対するこだわり、いずれも読んでいるこちらが向田ワールドに引き込まれる巧みさで書かれているエッセイ集でした。
いいものを読んだ、ごちそうさまでしたヽ(=´▽`=)ノ・・っていう感想です。
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