【The Beatles 研究室・復刻版】The Beatles (White Album)[A-2]Dear Prudence
今回取り上げるのは、「The Beatles (White Album)」A面二曲目の「Dear Prudence」です。
ちょうど、ビートルズがインドに瞑想修行の旅に出た時に、ローリングストーンズのミック・ ジャガーの恋人“ミア・ファーロー”と、その妹“プルーデンス・ファーロー”も同行することになりました。
インドで、ファーローは瞑想に“はまり”、なかなか部屋から出てこなくなりました。ビートルズ達には、ジョージ以外ツアーやレコーディングの無い息抜きの旅となっていたため、ファーローに何度も外に出ようと呼びかけたようです。その状況をヒントにジョンが作った曲です。
因みにそのプルーデンス・ファーローは、アメリカに帰国後、瞑想のインストラクターとなり、自身で道場のようなものを設立したらしいです。ようするにその取り組み方は本物だったのですね。
で、曲の方はというと、ジョンの爪弾くスリー・フィンガーのアコースティック・ギター、それにドラムとベースの弾むようなリズムが中心となり、ちょっと不思議な世界観が拡がっています。
さらに、途中から16ビートになるドラムは、何というかアンバランスな粒の揃わないぎくしゃくしたリズムです。最初聞いた頃は、「リンゴは、何か工夫してわざとやっているのだろうか」と思いました。
しかし、後々に判明したのは、このドラムはポール・マッカートニーであったということです。なので、わざとぎくしゃくやったのか、それとも技量が伴わなかったのかは、ちょっと不明です。
でも、全てが結果オーライのビートルズですから、このドラムも非常に印象に残るドラムとなりました。むしろ、これしか無いっていうくらいに感じるようになりました。
元々ポールのドラマーとしてのセンスの良さは定評があるわけで、そんなポールの才能が早くも出たと考えた方が良いのかもしれません。
ラスト付近の乱れ打ちのようなプレイも、その後のソロアルバム「マッカートニー」の「クリーン・アクロア」などで聞くことのできたプレイの片鱗がうかがえて、なかなかのものです。
さてさて、歌詞の方はプルーデンスに「陽が昇り、空は美しく澄んでキミみたいに美しい、外へ遊びに来ないか」と語りかける内容になっています。「風はやさしく、小鳥はさえずる」なんて、ジョンの歌詞にも自然のやさしさを描くような新しい境地が見えているような気もします。
けっこう良い詩だと思います。因みにプルーデンスというのは、辞書を見ると女性の人名以外にも、思慮、分別、細心、慎重・・などの意味もあり、この歌にはもってこいの名前だったわけです。
名前と行動からヒントを得てこの曲をジョンは作ったのでしょうね。ホワイト・アルバムでも印象に残る力作ではないかと思います。
〈追記〉2020/07/12
2009年リマスター後のステレオ、モノ、両方を聞いてみましたが、細かいところをあげると、かなり異なる部分があるようです。最後のフェイド・アウトも長さが異なるようだし、あちこち編集の跡がうかがえるかと思います。
全体的な印象からいうと、モノの方が抑制の効いた“大人な仕上がり”のように聞こえます。
各楽器の全体のバランスもモノの方が整っていると感じました。
50周年記念盤もあたってみようと、まずは「イーシャー・デモ」のバージョン。ジョンのやさしく穏やかなボーカルとスリー・フィンガーのアコースティック・ギターのつま弾きが不思議な世界にいざなってくれるようなソフトな仕上がりです。
たたみ込むようなボーカルの部分にもドラムが入っていなく、他の人のコーラスも無いので“ジョンの世界”が展開され、これはこれでとても味わいあるものになっています。
最後には、ジョンの“語り”まで入って・・。
同じく50周年記念盤の「セッションズ」も聞いてみます。
ボーカルにはまだエコー等エフェクトが掛かっていません。ドラムも“ポスポス”いってて、響きが感じられません。基本的なリズムをなぞっている段階のようです。
そして同じく50周年記念盤の本編、ジャイルズ・マーティンのステレオ新編集版も聞きました。
よけいなエフェクトは除いた感じを受けました。
ドラムの音もシンプルで、特にスネアは明瞭でシャキッとしています。
ジョンのボーカルも生声を生かし、エレキ・ギターの音も歪みの部分をあまり強調しないようにしていると思います。
なんかポールのドラムもワンランク上手く(^^;)なったように感じてしまいます。不思議・・。
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