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2020/08/30

「いねむり先生/伊集院静」を読んだ

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『いねむり先生/伊集院静著(集英社文庫)』を読みました。
ブックオフでたまたま見かけて「おっ、これは」と思い、買ったのですが、買ってよかった、素晴しい本でした。

これは伊集院さんの自伝的な長編小説となっていて、奥さん、あの夏目雅子さんと死別し、酒に溺れ、ギャンブルに沈み込んだような日々にあった“どん底”状態の伊集院さんが、友人Kさんが初めて人に逢わせたいと言ってきた機会に色川武大(阿佐田哲也)氏と出会い、絶望の淵から抜け出す糸口を見つけ出すまでの話でした。

名前こそ小説中には出て来ませんが、『先生(色川武大)』さんは、直木賞、泉鏡花文学賞、川端康成文学賞などを受賞した小説家でもあり、雀士としての「阿佐田哲也」名での麻雀小説家としても知られ、さらに、ジャズ、映画、喜劇、芸能など幅広い分野で無限大とも言える知識があり、交友関係はあまりにも広く、皆が「先生」と色川さんを慕っていたようです。

この小説の主人公である著者・伊集院静さん本人と「旅打ち」といって競輪や麻雀、さらにその道、その世界の人から誘われる危険な匂いのする賭場にも立ち入りながら旅をする様子が描かれていて、その途中、様々な場面で“先生”はそれこそ色々な人との交流を伊集院さんに見せていて、それらすべてが伊集院さんにとって大きな影響をもたらすのでした。

旅打ちに出掛けていった先での“先生”を慕う人達は千差万別、十人十色。
先生は自然体でそれらの人々と愉しそうに交流するのですが、伊集院さんは自身も感じている“先生”の不思議な人間的魅力にどんどん惹かれていきます。

これはこの本からだけではなく、いろいろなジャンルの有名人の方などが「私などは“ぶだい”さんと呼ばせてもらい、遊んでもらいました。」と語っているのをよく聞きます。
色川さんがその場にいるだけで、皆、安心してその時間を愉しみながら過していたことがあちこちで語られています。

知識が宇宙的に広く、やさしい心持ちで、さらに「ナルコレプシー」という病気を患っているせいで突然どこでも眠ってしまうという“いねむり先生”ぶりをこの小説中でも発揮していました。

誰もが色川さんに「自分が一番愛されている」と感じさせてしまうような人物だったようですが、色川さんの死後、山口瞳さんが「彼には八方美人の性格があり、皆にそう思わせるようになった」というようなことも書かれています。
でも、きっとほんとうに魅力ある人だったのだと思います。伊集院さんも完全に色川さんの虜になっていたように感じました。

小説中、色川さんが伊集院さんに何度も「もう一度小説を書いてみては」とすすめています。
この小説の中ではまだ小説家には復帰しませんが、やがて伊集院さんが文筆業に復帰する糸口、きっかけとなったのが色川さんとの出会いであったことは間違いありません。

この長編小説中のすべての出来事、出会い、風景が心地良く、心に残り、不思議と心安らぐものでした。
今年出会った小説の中でも一番心に残るものとなりました。
人の生き方について静かに考えることができた、そんな印象です。

 

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